少年の刑事事件と刑罰の緩和・不定期刑

少年法の理念は保護主義ですが、刑事事件として扱われることもあります。しかし、保護主義の理念はその場合でも残されています。

それが刑罰の緩和と不定期刑です。

少年の刑事事件の扱いと、少年法が規定している刑罰の緩和と不定期刑はどのようなものなのでしょうか?

少年の刑事事件

少年の刑事事件については、少年法第40条~第60条に書かれています。

少年法には全件送致主義があり、原則としてすべての少年事件を家庭裁判所に送致することになっています。

家庭裁判所の審判の決定として検察官への送致となった事件の扱いについて、少年法第45条に書かれています。

第45条
家庭裁判所が、第二十条の規定によつて事件を検察官に送致したときは、次の例による。
第1号
第十七条第一項第一号の措置は、その少年の事件が再び家庭裁判所に送致された場合を除いて、検察官が事件の送致を受けた日から十日以内に公訴が提起されないときは、その効力を失う。公訴が提起されたときは、裁判所は、検察官の請求により、又は職権をもつて、いつでも、これを取り消すことができる。
第2号
前号の措置の継続中、勾留状が発せられたときは、その措置は、これによつて、その効力を失う。
第3号
第一号の措置は、その少年が満二十歳に達した後も、引き続きその効力を有する。
第4号
第十七条第一項第二号の措置は、これを裁判官のした勾留とみなし、その期間は、検察官が事件の送致を受けた日から、これを起算する。この場合において、その事件が先に勾留状の発せられた事件であるときは、この期間は、これを延長することができない。
第5号
検察官は、家庭裁判所から送致を受けた事件について、公訴を提起するに足りる犯罪の嫌疑があると思料するときは、公訴を提起しなければならない。ただし、送致を受けた事件の一部について公訴を提起するに足りる犯罪の嫌疑がないか、又は犯罪の情状等に影響を及ぼすべき新たな事情を発見したため、訴追を相当でないと思料するときは、この限りでない。送致後の情況により訴追を相当でないと思料するときも、同様である。
第6号
少年又は保護者が選任した弁護士である付添人は、これを弁護人とみなす。
第7号
第四号の規定により第十七条第一項第二号の措置が裁判官のした勾留とみなされた場合には、勾留状が発せられているものとみなして、刑事訴訟法中、裁判官による被疑者についての弁護人の選任に関する規定を適用する。

少年法

検察官へ送致された事件は、送致を受けた日から10日以内に公訴が提起されなければ、その効力を失うこととなっています。

裁判で言い渡される刑罰は、大人と同等ではなく、刑罰は緩和されます。また、不定期刑が言い渡されることもあります。

家庭裁判所の審判については、「少年法における家庭裁判所の審判とその決定」に書いてあります。

少年に対する刑罰の緩和

少年法の理念は保護主義です。そのため、刑罰についても大人と同じようには適用されない規定があります。

少年法には「死刑と無期刑の緩和」、「不定期刑」として少年法第51条、第52条にその規定が書かれています。

死刑と無期刑の緩和

少年法第51条には、死刑と無期刑の緩和について書かれています。

第51条
罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、死刑をもつて処断すべきときは、無期刑を科する。
第2項
罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、無期刑をもつて処断するべきときであつても、有期の懲役又は禁錮を科することができる。この場合において、その刑は、十年以上二十年以下において言い渡す。

少年法

死刑と無期刑の緩和の対象となるのは「罪を犯すときに18歳未満」であった人です。判決が言い渡されるときの年齢ではないので注意が必要です。

罪を犯すときに18歳未満で死刑相当の場合は、無期刑に刑罰が緩和されます。

罪を犯すときに18歳未満で無期刑相当の場合は、有期の懲役か禁錮に刑罰が緩和されます。そして、その刑は10年以上20年以下となっています。

不定期刑

少年法第52条には不定期刑について書かれています。

第52条
少年に対して有期の懲役又は禁錮をもつて処断すべきときは、処断すべき刑の範囲内において、長期を定めるとともに、長期の二分の一(長期が十年を下回るときは、長期から五年を減じた期間。次項において同じ。)を下回らない範囲内において短期を定めて、これを言い渡す。この場合において、長期は十五年、短期は十年を超えることはできない。
第2項
前項の短期については、同項の規定にかかわらず、少年の改善更生の可能性その他の事情を考慮し特に必要があるときは、処断すべき刑の短期の二分の一を下回らず、かつ、長期の二分の一を下回らない範囲内において、これを定めることができる。この場合においては、刑法第十四条第二項の規定を準用する。
第3項
刑の執行猶予の言渡をする場合には、前二項の規定は、これを適用しない。

少年法

不定期刑というのは、「懲役(あるいは禁錮)〇年」と決めるのではなく、「懲役(あるいは禁錮)〇年以上〇年以下」というように、幅をもった刑のことを指します。

「長期」は刑期の上限(「〇年以下」の部分)、「短期」は刑期の下限(「〇年以上」の部分)になります。

長期は15年、短期は10年を超えることができないことになっています。

刑期は長期が定められ、その2分の1を下回らない範囲で短期が定められます。ただし、長期が10年を下回るときは、長期から5年引いた期間が短期の下限となります。

まとめ

  • 検察官へ送致された事件は10日以内に公訴を提起されなければそのう効力を失う
  • 死刑は無期刑に緩和される
  • 無期刑は有期の懲役・禁錮に緩和される
  • 緩和された懲役・禁錮は10年以上20年以下
  • 少年法には「〇年以上〇年以下」という不定期刑がある

少年法と少年の刑事事件まとめ【公認心理師試験対策】