公認心理師には秘密保持義務が課せられています。その一方で、児童虐待などでは通告・通報義務が課せられています。どちらを優先すればいいのでしょうか?
秘密保持義務も通告・通報義務も義務なので、守らなければいけません。
しかし、秘密保持義務を守れば通告・通報義務を守ることができず、通告・通報義務を守れば秘密保持義務を守ることができなくなってしまいます。
児童虐待防止法、高齢者虐待防止法、障害者虐待防止法、配偶者暴力防止法(DV防止法)、少年法、児童福祉法における通告・通報と秘密保持義務の関係を見ていきましょう。
公認心理師法の秘密保持義務については「公認心理師の法的義務と罰則・行政処分」にまとめてあります。
児童虐待防止法におけると秘密保持義務
児童虐待防止法の第6条には、通告について書かれています。そこに秘密保持義務との関係も規定されています。
児童虐待防止法第6条第3項
児童虐待防止法
刑法(明治四十年法律第四十五号)の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、第一項の規定による通告をする義務の遵守を妨げるものと解釈してはならない。
児童虐待防止法における通告義務は、公認心理師法を含む秘密保持義務より優先されます。
これについては、『公認心理師エッシェンシャルズ』にスクールカウンセラーXの事例として、次のように書かれています。
児童虐待防止法6条3項では、児童虐待の通告義務が他の法律の守秘義務規定より優先すると定められているから、通告しても、Xは守秘義務違反にはならない。(p.85)
『公認心理師エッセンシャルズ』
児童虐待防止法における通告は義務です。そして、通告は秘密保持義務より優先するため、児童虐待が疑われる場合は通告しなければいけないということです。
高齢者虐待防止法における通報と秘密保持義務
高齢者虐待防止法における通報と秘密保持義務の関係は、第7条第3項と第21条第6項に書かれています。
第7条第3項
刑法(明治四十年法律第四十五号)の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、前二項の規定による通報をすることを妨げるものと解釈してはならない。第21条第6項
高齢者虐待防止法
刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、第一項から第三項までの規定による通報(虚偽であるもの及び過失によるものを除く。次項において同じ。)をすることを妨げるものと解釈してはならない。
第7条第1項と第2項には、養護者からの虐待に関する通報について書かれています。
第21条第1項~第5項には、養介護施設従事者等からの虐待に関する通報について書かれています。
どちらの場合でも、高齢者虐待防止法に従って通報した場合、公認心理師法を含む法律の規定による秘密保持義務違反には問われません。
障害者虐待防止法における通報と秘密保持義務
障害者虐待防止法における通報と秘密保持義務の関係は、障害者虐待防止法第7条第2項、第16条第3項、第22条第3項に書かれています。
第7条第2項
刑法(明治四十年法律第四十五号)の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、前項の規定による通報をすることを妨げるものと解釈してはならない。第16条第3項
刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、第一項の規定による通報(虚偽であるもの及び過失によるものを除く。次項において同じ。)をすることを妨げるものと解釈してはならない。第22条第3項
障害者虐待防止法
刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、第一項の規定による通報(虚偽であるもの及び過失によるものを除く。次項において同じ。)をすることを妨げるものと解釈してはならない。
障害者虐待防止法第7条には養護者からの虐待、第16条には障害者福祉施設従事者等からの虐待、第22条には使用者からの虐待の通報に関して書かれています。
いずれも通報することは、公認心理師法を含む法律の規定による秘密保持義務違反には問われないとされています。
配偶者暴力防止法(DV防止法)における通報と秘密保持義務
DV防止法における通報と秘密保持義務の関係は、配偶者暴力防止法(DV防止法)第6条第3項に書かれています。
第6条第3項
配偶者暴力防止法
刑法(明治四十年法律第四十五号)の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、前二項の規定による通報をすることを妨げるものと解釈してはならない。
DV防止法における通報は、公認心理師法を含む法律の規定による秘密保持義務違反にはなりません。
少年法における通告と秘密保持義務
少年法については、秘密保持義務に関する規定が存在していません。
もし少年法の通告義務に基づいて同意なく通告したとしたら、守秘義務違反に問われることになります。
児童福祉法における通告と秘密保持義務
児童福祉法における通告と秘密保持義務の関係は、児童福祉法第25条第2項に書かれています。
第25条第2項
児童福祉法
刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、前項の規定による通告をすることを妨げるものと解釈してはならない。
児童福祉法における通告は、公認心理師法を含む法律の規定による秘密保持義務違反にはなりません。
まとめ
秘密保持義務より通告・通報が優先
- 児童虐待防止法
- 高齢者虐待防止法
- 障害者虐待防止法
- 配偶者暴力防止法
秘密保持義務が優先
- 少年法
「児童虐待、高齢者虐待、障害者虐待、配偶者暴力、少年法、児童福祉法の通告・通報」