医療法における医療提供施設の種類

医療提供施設は法律的にどのように規定されているのでしょうか?

医療提供施設は医療法にその規定があります。

公認心理師が活躍することが期待される分野の1つである保健・医療分野の基本的な知識として、医療提供施設について確認しておきましょう。

医療提供施設

医療提供施設はその名前からわかるように、医療を提供する施設のことです。一般的には「病院」がイメージされると思います。

医療法では、「病院」以外にも医療提供施設が定められています。

医療提供施設全体については、医療法第1条の2第2項に書かれています。

第1条の2第2項
医療は、国民自らの健康の保持増進のための努力を基礎として、医療を受ける者の意向を十分に尊重し、病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、調剤を実施する薬局その他の医療を提供する施設(以下「医療提供施設」という。)、医療を受ける者の居宅等(居宅その他厚生労働省令で定める場所をいう。以下同じ。)において、医療提供施設の機能に応じ効率的に、かつ、福祉サービスその他の関連するサービスとの有機的な連携を図りつつ提供されなければならない。

医療法

医療提供施設は、病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、調剤を実施する薬局、その他の医療を提供する施設のことを指します。

病院

病院は医療法第1条の5に書かれています。

第1条の5
この法律において、「病院」とは、医師又は歯科医師が、公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所であつて、二十人以上の患者を入院させるための施設を有するものをいう。病院は、傷病者が、科学的でかつ適正な診療を受けることができる便宜を与えることを主たる目的として組織され、かつ、運営されるものでなければならない。

医療法

一般的に医療機関全般を指すことが多い「病院」ですが、医療法ではそれとは異なる定義がなされています。

医療法における病院は、20人以上が入院できる施設のことです。歯科であっても20人以上の患者を入院させられる施設であれば、「病院」となります。

また、科学的で適正な診療を受けられる施設でなければなりません。

診療所

診療所は医療法第1条の5第1項に書かれています。

第1条の5第2項
この法律において、「診療所」とは、医師又は歯科医師が、公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所であって、患者を入院させるための施設を有しないもの又は十九人以下の患者を入院させるための施設を有するものをいう。

医療法

「病院」と「診療所」の違いは、入院できる患者数にあります。

診療所は入院施設がないか、19人以下の患者が入院できる施設がある医療提供施設となっています。

介護老人保健施設

介護老人保健施設は医療法第1条の6に書かれています。

第1条の6
この法律において、「介護老人保健施設」とは、介護保険法(平成九年法律第百二十三号)の規定による介護老人保健施設をいう。

医療法

介護保険法で規定されている介護老人保健施設も医療提供施設となっています。

介護医療院

介護医療院は医療法第1条の6第2項に書いてあります。

第1条の6第2項
この法律において、「介護医療院」とは、介護保険法の規定による介護医療院をいう。

医療法

介護医療院も介護保険法で規定された施設ですが、医療提供施設となっています。

助産所

助産所は医療法第2条に書かれています。

第2条
この法律において、「助産所」とは、助産師が公衆又は特定多数人のためその業務(病院又は診療所において行うものを除く。)を行う場所をいう。
第2項
助産所は、妊婦、産婦又はじよく婦十人以上の入所施設を有してはならない。

医療法

助産所は助産師が業務を行う場所であり、病院・診療所ではない施設のことを指します。

10人以上の入所施設を有してはいけないという規定もあります。

地域医療支援病院

地域医療支援病院は医療法第4条に書かれています。

第4条
国、都道府県、市町村、第四十二条の二第一項に規定する社会医療法人その他厚生労働大臣の定める者の開設する病院であつて、地域における医療の確保のために必要な支援に関する次に掲げる要件に該当するものは、その所在地の都道府県知事の承認を得て地域医療支援病院と称することができる。
第1号
他の病院又は診療所から紹介された患者に対し医療を提供し、かつ、当該病院の建物の全部若しくは一部、設備、機器又は器具を、当該病院に勤務しない医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療従事者(以下単に「医療従事者」という。)の診療、研究又は研修のために利用させるための体制が整備されていること。
第2号
救急医療を提供する能力を有すること。
第3号
地域の医療従事者の資質向上を図るための研修を行わせる能力を有すること。
第4号
厚生労働省令で定める数以上の患者を入院させるための施設を有すること。
第5号
第二十一条第一項第二号から第八号まで及び第十号から第十二号まで並びに第二十二条第一号及び第四号から第九号までに規定する施設を有すること。
第6号
その施設の構造設備が第二十一条第一項及び第二十二条の規定に基づく厚生労働省令並びに同項の規定に基づく都道府県の条例で定める要件に適合するものであること。

医療法

第4条をまとめると、地域医療支援病院として認められる条件は次のようなものとなっています。

  1. 他の医療施設から紹介された患者の治療をし、その病院に勤務していない医療従事者の診療・研究・研修のために設備等を貸し出せること
  2. 救急医療ができること
  3. 地域の医療従事者の研修ができること
  4. 厚生労働省令で定める以上の患者を入院させられること
  5. 医療法で定める施設を有していること
  6. 厚生労働省令と都道府県の条例で定められている要件に適合すること

これらの条件を満たす病院が都道府県知事の承認を得ることで、地域医療支援病院となることができます。

特定機能病院

特定機能病院は医療法第4条の2に書かれています。

第4条の2
病院であついて、次に掲げる要件に該当するものは、厚生労働大臣の承認を得て特定機能病院と称することができる。
第1号
高度の医療を提供する能力を有すること。
第2号
高度の医療技術の開発及び評価を行う能力を有すること。
第3号
行動の医療に関する研修を行わせる能力を有すること。
第4号
医療の高度の安全を確保する能力を有すること。
第5号
その診療科名中に、厚生労働省令の定めるところにより、厚生労働省令で定める診療科名を有すること。
第6号
厚生労働省令で定める数以上の患者を入院させるための施設を有すること。
第7号
その有する人員が第二十二条の二の規定に基づく厚生労働省令で定める要件に適合するものであること。
第8号
第二十一条第一項第二号から第八号まで及び第十行から第十二号まで並びに第二十二条の二第二号、第五号及び第六号に規定する施設を有すること。
第9号
その施設の構造設備が第二十一条第一項及び第二十二条の二の規定に基づく厚生労働省令並びに同項の規定に基づく都道府県の条例で定める要件に適合すること。

医療法

第4条の2をまとめると、特定機能病院として認められる条件は次のようなものとなっています。

  1. 高度の医療を提供できること
  2. 高度の医療技術の開発と評価ができること
  3. 高度の医療に関する研修ができること
  4. 医療の高度の安全を確保できること
  5. 厚生労働省令で定める診療科があること
  6. 厚生労働省令で定める数以上の患者が入院できる施設があること
  7. 医療法、厚生労働省令、都道府県の条例で定める人員と施設の要件を満たしていること

これらの条件を満たし、厚生労働大臣が承認すれば特定機能病院となることができます。

臨床研究中核病院

臨床研究中核病院は医療法第4条の3に書かれています。

第4条の3
病院であつて、臨床研究の実施の中核的な役割を担うことに関する次に掲げる要件に該当するものは、厚生労働大臣の承認を得て臨床研究中核病院と称することができる。
第1号
特定臨床研究(厚生労働省令で定める基準に従つて行う臨床研究をいう。以下同じ。)に関する計画を立案し、及び実施する能力を有すること。
第2号
他の病院又は診療所と共同して特定臨床研究を実施する場合にあつては、特定臨床研究の実施の主導的な役割を果たす能力を有すること。
第3号
他の病院又は診療所に対し、特定臨床研究の実施に関する相談に応じ、必要な情報の提供、助言その他の援助を行う能力を有すること。
第4号
特定臨床研究に関する研修を行う能力を有すること。
第5号
その診療科名中に厚生労働省令で定める診療科名を有すること。
第6号
厚生労働省令で定める数以上の患者を入院させるための施設を有すること。
第7号
その有する人員が第二十二条の三の規定に基づく厚生労働省令で定める要件に適合するものであること。
第8号
第二十一条第一項第二号から第八号まで及び第十号から第十二号まで並びに第二十二条の三第二号、第五号及び第六号に規定する施設を有すること。
第9号
その施設の構造設備が第二十一条第一項及び第二十二条の三の規定に基づく厚生労働省令並びに同項の規定に基づく都道府県の条例で定める要件に適合するものであること。
第10号
前各号に掲げるもののほか、特定臨床研究の実施に関する厚生労働省令で定める要件に適合するものであること。

医療法

医療法第4条の3をまとめると、臨床研究中核病院として認められる条件は次のようなものとなっています。

  1. 特定臨床研究を計画立案、実施できること
  2. 他の病院等と特定臨床研究を行う場合に、主導的な役割を果たせること
  3. 他の病院等に対して、特定臨床研究に関する相談・情報提供・助言等が行えること
  4. 特定臨床研究に関する研修を行えること
  5. 厚生労働省令で定める診療科名があること
  6. 厚生労働省令で定める数以上の患者が入院できること
  7. 医療法、厚生労働省令、都道府県の条例で定める人員と施設の要件を満たしていること
  8. 特定臨床研究の実施に関する厚生労働省令で定める要件を満たしていること

これらの条件を満たし、厚生労働大臣の承認を得ることで臨床研究中核病院になることができます。

まとめ

医療法に書かれている医療提供施設は次の通りです。

  • 病院(20人以上入院できる)
  • 診療所(入院できる患者数が19人以下、あるいは入院施設なし)
  • 介護老人保健施設
  • 介護医療院
  • 助産所(10人以上の入所施設を有してはならない)
  • 地域医療支援病院(必要な要件を満たし、都道府県知事が承認)
  • 特定機能病院(必要な条件を満たし、厚生労働大臣が承認)
  • 特定臨床研究中核病院(必要な要件を満たし、厚生労働大臣が承認)

医療提供施設の他に、「病床」というものあります。病床については「病床の種別-精神病床、感染症病床、結核病床、療養病床、一般病床」にまとめてあります。