少年院の目的・種類・矯正教育・社会復帰支援

少年法における保護処分の中には「少年院への送致」があります。少年院ではどのようなことが行われているのでしょうか?

この記事には、少年院の目的、少年院の種類、少年院での矯正教育・社会復帰支援についてまとめてあります。

少年法における保護処分については、「少年法における保護処分はどうなっているのか?」に書いてあります。

少年院の目的

少年院は少年院法に規定された施設です。少年院法の目的は少年院法第1条に書かれています。

第1条
この法律は、少年院の適正な管理運営を図るとともに、在院者の人権を尊重しつつ、その特性に応じた適切な矯正教育その他の在院者の健全な育成に資する処遇を行うことにより、在院者の改善更生及び円滑な社会復帰を図ることを目的とする。

少年院法

少年院法の目的は、少年院の適正な管理運営を図ること、在院者の改善更生と円滑な社会復帰を図ることとなっています。

その方法として、人権を尊重すること、特性に応じた適切な矯正教育などで健全な育成をするための処遇を行うことが挙げられています。

また、少年院の処遇の原則は、少年院法第15条に書かれています。

第15条
在院者の処遇は、その人権を尊重しつつ、明るく規則正しい環境の下で、その健全な心身の成長を図るとともに、その自覚に訴えて改善更生の意欲を喚起し、並びに自主、自立及び協同の精神を養うことに資するように行うものとする。
第2項
在院者の処遇に当たっては、医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的知識及び技術を活用するとともに、個々の在院者の性格、年齢、経歴、心身の状況及び発達の程度、非行の状況、家庭環境、交友関係その他の事情を踏まえ、その者の最善の利益を考慮し、その者に対する処遇がその特性に応じたものとなるようにしなければならない。

少年院法

第15条でも人権の尊重が書かれています。

「健全な心身の成長を図る」、「最善の利益を考慮」などもあり、少年の改善更生が目的とされていることがわかります。

在院者の処遇には心理学を含む専門的知識と技術を活用することも明記されています。

さらに、「その者の最善の利益を考慮」することも書かれています。

少年院は在院する少年に対して罰を与える施設ではなく、改善更生と社会復帰が目的となっています。

少年院の種類

少年院法第4条には少年院の種類が書かれています。

第4条
少年院の種類は、次の各号に掲げるとおりとし、それぞれ当該各号に定める者を収容するものとする。
第1号
第一種 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がないおおむね十二歳以上二十三歳未満のもの(次号に定める者を除く。)
第2号
第二種 保護処分の執行を受ける者であって、心身の著しい障害がない犯罪的傾向が進んだおおむね十六歳以上二十三歳未満のもの
第3号
第三種 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害があるおおむね十二歳以上二十六歳未満のもの
第4号
第四種 少年院において刑の執行を受ける者

少年院法

2014年(平成26年)改正・2015年(平成27年)施行された少年院法で、従来の少年院の種別(初等、中等、特別、医療)から上記の4種類に改訂されています。

現在の少年院の種類をまとめると、次のようになります。保護処分を受けた少年が入るのは第1種~第3種です。

  • 第1種:心身に著しい障害がない概ね12歳以上23歳未満
  • 第2種:心身に著しい障害がない犯罪的傾向が進んだ概ね16歳以上23歳未満
  • 第3種:心身に著しい障害がある概ね12歳以上26歳未満
  • 第4種:少年院における刑の執行

少年院での矯正教育・社会復帰支援

少年院では、矯正教育と社会復帰支援が行われます。

それらは少年法の目的に従って実施されることになっています。

矯正教育

少年院での矯正教育の目的は、少年院法第23条に書かれています。

第23条
矯正教育は、在院者の犯罪的傾向を矯正し、並びに在院者に対し、健全な心身を培わせ、社会生活に適応するのに必要な知識及び能力を習得させることを目的とする。
第2項
矯正教育を行うに当たっては、在院者の特性に応じ、次節に規定する指導を適切に組み合わせ、体系的かつ組織的にこれを行うものとする。

少年院法

矯正教育の目的は、犯罪傾向を強制すること、社会生活に適応するのに必要な知識と能力を習得されることとなっています。

この目的を達成するために、生活指導、職業指導、教科指導、体育指導、特別活動指導が行われます。これらは学校教育における指導と関連があるかもしれません。

生活指導(第24条)

少年院における生活指導は少年院法第24条に書かれています。

第24条
少年院の長は、在院者に対し、善良な社会の一員として自立した生活を営むための基礎となる知識及び生活態度を習得させるため必要な生活指導を行うものとする。
第2項
将来の進路を定めていない在院者に対し前項の生活指導を行うに当たっては、その特性に応じた将来の進路を選択する能力の習得に資するよう特に配慮しなければならない。
第3項
次に掲げる事情を有する在院者に対し第一項の生活指導を行うに当たっては、その事情の改善に資するよう特に配慮しなければならない。
第1号
犯罪又は刑罰法令に触れる行為により害を被った者及びその家族又は遺族の心情を理解しようとする意識が低いこと。
第2号
麻薬、覚醒剤その他の薬物に対する依存があること。
第3号
その他法務省令で定める事情

少年院法

少年院を出た後、法に触れるような行為をせずに生活していくためには、自立した生活のための知識や生活態度を習得している必要があります。

それらを習得するための生活指導が行われます。

少年院法第24条第2項・第3項は生活指導を行う際の配慮についての記述となっています。

第2項には、将来の進路を決めていない場合は、進路を選択する能力の習得に役立つように配慮をすることが書かれています。

第3項は、被害者等の心情を理解する意識が低い場合、薬物依存がある場合、法務省令で定める事情がある場合に、その事情の改善に役立つように配慮することが定められています。

職業指導(第25条)

少年院における職業指導は少年院法第25条に書かれています。

第25条
少年院の長は、在院者に対し、勤労意欲を高め、職業上有用な知識及び技能を習得させるため必要な職業指導を行うものとする。

少年院法

社会で生活していくには収入が必要です。多くの人は、働くことによって収入を得て生活しているため、職業に関する指導は重要なものになります。

少年院では、労働意欲を高めること、働く上で役に立つ知識や技能を習得することを目的として、職業指導が行われています。

教科指導(第26条、第27条)

少年院における教科指導は少年院法第26条と第27条に書かれています。まず第26条を見てみましょう。

第26条
少年院の長は、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に定める義務教育を終了しない在院者その他の社会生活の基礎となる学力を欠くことにより改善更生及び円滑な社会復帰に支障があると認められる在院者に対しては、教科指導(同法による学校教育の内容に準ずる内容の指導をいう。以下同じ。)を行うものとする。
第2項
少年院の長は、前項に規定するもののほか、学力の向上を図ることが円滑な社会復帰に特に資すると認められる在院者に対し、その学力の状況に応じた教科指導を行うことができる。

少年院法

学校での教育は社会生活の基礎となる学力を身につける上で重要なものです。どの程度の学力が必要かという点では議論があると思いますが、いわゆる「読み書きそろばん」と呼ばれる程度の学力は重要と言えるでしょう。

少年院法では、「社会生活の基礎となる学力を欠くことにより改善更生及び円滑な社会復帰に支障がある」場合に、教科指導を行うこととなっています。

それに加え、「学力の向上を図ることが円滑な社会復帰に特に資する」場合に、その学力に応じた教科指導を行うことができるとされています。

教科指導においても、改善更生、社会復帰が目的となっていることがわかります。

この教科指導と、学校の教育課程との関係も知っておく必要があります。それは少年院法第27条に書かれています。

第27条
教科指導により学校教育法第一条に規定する学校(以下単に「学校」という。)のうち、いずれかの学校の教育課程に準ずる教育の全部又は一部を修了した在院者は、その修了に係る教育の範囲に応じて当該教育課程の全部又は一部を修了したものとみなす。
第2項
少年院の長は、学校の教育課程に準ずる教育について教科指導を行う場合には、当該教科指導については、文部科学大臣の勧告に従わなければならない。

少年院法

少年院法における教科指導で学校の教育課程に準ずる教育を修了した場合は、その教育課程を修了したものとみなすことができます。

少年院に入院している間に教科指導を受けた少年は、学校教育において再度その教育課程を修了する必要はないということです。

ただし、学校の教育課程に準ずる教科指導を行う場合は、文部科学大臣の勧告に従う必要があります。

体育指導(第28条)

少年院における体育指導は少年院法第28条に書かれています。

第28条
少年院の長は、在院者に対し、善良な社会の一員として自立した生活を営むための基礎となる健全な心身を培わせるため必要な体育指導を行うものとする。

少年院法

体育指導の目的は、自立した生活を営むための基礎となる健全な心身を培うこととなっています。

特別活動指導(第29条)

少年院における特別活動指導については少年院法第29条に書かれています。

第29条
少年院の長は、在院者に対し、その情操を豊かにし、自主、自律及び協同の精神を養うことに資する社会貢献活動、野外活動、運動競技、音楽、演劇その他の活動の実施に関し必要な指導を行うものとする。

少年院法

特別活動指導の目的は、情操を豊かにすること、自主・自立・共同の精神を養うこととなっています。

そのために、社会貢献活動、野外活動、運動競技、音楽、演劇などに関する指導が行われます。

社会復帰支援

少年院法の目的の1つは社会復帰です。そのため、少年院では社会復帰支援も行われています。

社会復帰支援については少年院法第44条に書かれています。

第44条
少年院の長は、在院者の円滑な社会復帰を図るため、出院後に自立した生活を営む上での困難を有する在院者に対しては、その意向を尊重しつつ、次に掲げる支援を行うものとする。
第1号
適切な住居その他の宿泊場所を得ること及び当該宿泊場所に帰住することを助けること。
第2号
医療及び療養を受けることを助けること。
第3号
修学又は就業を助けること。
第4号
前三号に掲げるもののほか、在院者が健全な社会生活を営むために必要な援助を行うこと。
第2項
前項の支援は、その効果的な実施を図るため必要な限度において、少年院の外の適当な場所で行うことができる。
第3項
少年院の長は、第一項の支援を行うに当たっては、保護観察所の長と連携を図るように努めなければならない。

少年院法

少年院では、少年院を出た後、自立した生活をする上で困難がある在院者に対して社会復帰支援が行われます。

社会復帰支援の対象となることをまとめると、次のようになります。

  1. 住居・宿泊場所を得ること、そこに帰住することに対する支援
  2. 医療・療養を受けることに対する支援
  3. 修学・就業に対する支援
  4. 社会生活をするために必要な支援

これらの支援は第44条第2項に書かれている通り、少年院の外で行うことができます。

また、社会復帰支援の1つ目に挙げられている住居・宿泊場所に関する支援は、保護観察所の長と連携を図るように努めることが求められています。

まとめ

少年院法の目的

  • 改善更生
  • 円滑な社会復帰

少年院の種類

  • 第1種:心身に著しい障害がない概ね12歳以上23歳未満
  • 第2種:心身に著しい障害がない犯罪的傾向が進んだ概ね16歳以上23歳未満
  • 第3種:心身に著しい障害がある概ね12歳以上26歳未満
  • 第4種:少年院における刑の執行

少年院での矯正教育

  • 生活指導
  • 職業指導
  • 教科指導
  • 体育指導
  • 特別活動指導

少年院での社会復帰支援

  • 住居・宿泊場所を得ること、そこに帰住することに対する支援
  • 医療・療養を受けることに対する支援
  • 修学・就業に対する支援
  • 社会生活をするために必要な支援
  • 社会復帰支援は少年院の外で行うことができる
  • 住居・宿泊場所に関する支援は、保護観察所の長と連携

少年法と少年の刑事事件まとめ【公認心理師試験対策】