少年法では、少年事件に対する審判についてどのように規定されているのでしょうか?
少年事件は、家庭裁判所は調査を踏まえて対応を決定することになっています。その1つが「審判」です。
家庭裁判所による調査の後、どのような決定がなされ、どのように審判が行われるかを見ていきましょう。
家庭裁判所の調査については「少年法における家庭裁判所の調査はどのように行われるのか?」にまとめてあります。
家庭裁判所の決定
家庭裁判所の決定には、児童福祉法の措置(少年法第18条)、審判を開始しない旨の決定(少年法第19条)、検察官への送致(少年法第20条)、審判開始の決定(第21条)があります。
児童福祉法の措置(少年法第18条)
児童福祉法の措置については、少年法第18条に次のように書かれています。
第18条
少年法
家庭裁判所は、調査の結果、児童福祉法の規定による措置を相当と認めるときは、決定をもつて、事件を権限を有する都道府県知事又は児童相談所長に送致しなければならない。
この決定がなされた少年は、家庭裁判所から都道府県知事か児童相談所長に送致され、児童福祉法の規定に基づいた対応がなされることになります。
審判を開始しない旨の決定(少年法第19条)
次に、少年法第19条で規定されている「審判を開始しない旨の決定」についてです。
第19条
少年法
家庭裁判所は、調査の結果、審判に付することができず、又は審判に付するのが相当でないと認めるときは、審判を開始しない旨を決定しなければならない。
少年事件をすべて審判に付するわけではなく、審判を開始しない決定がなされることがあるということです。
ただし、少年法第19条第2項には、次のように書かれています。
第19条第2項
少年法
家庭裁判所は、調査の結果、本人が二十歳以上であることが判明したときは、前項の規定にかかわらず、決定をもつて、事件を管轄地方裁判所に対する検察庁の検察官に送致しなければならない。
この条項は、20歳以上は少年法の対象にならないので設けられていると考えられます。法律は厳密でなければならないということを示す例と言えるかもしれません。
検察官への送致(少年法第20条)
検察官への送致については、少年法第20条に書かれています。
第20条
少年法
家庭裁判所は、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、決定をもつて、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。
死刑、懲役、禁錮に当たる罪の事件というのがポイントです。それ以外の罪に当たる事件については、検察官への送致は行われないということです。
検察官への送致について、少年法第20条第2項で補足がなされています。
第20条第2項
少年法
前項の規定にかかわらず、家庭裁判所は、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であつて、その罪を犯すとき十六歳以上の少年に係るものについては、同項の決定をしなければならない。ただし、調査の結果、犯行の動機及び態様、少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、この限りでない。
犯行時に16歳上で、故意の犯罪行為で被害者を死亡させた場合は、刑事処分以外の措置が相当と判断されなければ、検察官への送致になるということです。
この検察官への送致は逆送致と呼ばれるようです。
家庭裁判所の審判(少年法第21条)
家庭裁判所の審判開始の決定については、少年法第21条に書かれています。
第21条
少年法
家庭裁判所は、調査の結果、審判を開始するのが相当であると認めるときは、その旨の決定をしなければならない。
審判は、児童福祉法による措置、審判を開始しない旨の決定、検察官への送致と並ぶものということです。
家庭裁判所の審判とその決定
家庭裁判所の調査の結果、審判を開始する必要があると判断された場合、家庭裁判所による審判が行われます。
家庭裁判所の審判の方法
家庭裁判所の審判の方法については、少年法第22条に書かれています。
第22条
少年法
審判は、懇切を旨として、和やかに行うとともに、非行のある少年に対し自己の非行について内省を促すものとしなければならない。
第2項
審判は、これを公開しない。
第3項
審判の指揮は、裁判長が行う。
家庭裁判所の審判は非公開で行われ、内省を促すものでなければいけません。これは少年法の目的である「少年の健全な育成」に基づいていると言えます。
家庭裁判所の審判の結果
家庭裁判所の審判が行われると、保護処分にするかどうかが決定されます。
保護処分にならない場合(少年法第23条)
保護処分にするかが決定されます。保護処分にならない場合については、少年法第23条に規定されています。
第23条
家庭裁判所は、審判の結果、第十八条又は第二十条にあたる場合であると認めるときは、それぞれ、所定の決定をしなければならない。
第2項
家庭裁判所は、審判の結果、保護処分に付することができず、又は保護処分に付する必要がないと認めるときは、その旨を決定しなければならない。
第3項
第十九条第二項の規定は、家庭裁判所の審判の結果、本人が二十歳以上であることが判明した場合に準用する。
少年法第18条は児童福祉法による措置、第20条は検察官への送致です。
第23条第2項は、保護処分の対象にならない場合は、保護処分をしない(不処分)決定をしなければならないという規定になっています。
第23条第3項の規定は、少年法の対象外であることが判明した際に適用されるものです。
少年法第19条第2項には次のように書かれています。
第19条第2項
少年法
家庭裁判所は、調査の結果、本人が二十歳以上であることが判明したときは、前項の規定にかかわらず、決定をもつて、事件を管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。
少年法の対象外である20歳以上の場合は、検察官への送致を決定しなければならないということです。
以上のように、保護処分をしない場合は、児童福祉法による措置、検察官への送致、不処分のいずれかの決定がなされます。
保護処分(少年法第24条)
保護処分については、少年法第24条に書かれています。
第24条
少年法
家庭裁判所は、前条の場合を除いて、審判を開始した事件につき、決定をもつて、次に掲げる保護処分にしなければならない。ただし、決定の時に十四歳に満たない少年に係る事件については、特に必要と認める場合に限り、第三号の保護処分にすることができる。
第1号
保護観察所の保護観察に付すること。
第2号
児童自立支援施設又は児童養護施設に送致すること。
第3号
少年院に送致すること。
保護処分は、保護観察所の保護観察、児童自立支援施設・児童養護施設への送致、少年院への送致の3種類となっています。
少年院への送致については、14歳未満の場合は「特に必要と認める場合に限り」と制限があります。
14歳というのは犯罪少年と触法少年を分ける年齢でもあるので、覚えておくと良さそうです。
まとめ
家庭裁判所の決定
- 児童福祉法による措置
- 審判不開始
- 検察官への送致
- 審判開始
審判の結果
- 児童福祉法による措置
- 検察官への送致
- 不処分
- 保護処分
保護処分
- 保護観察所の保護観察
- 児童自立支援施設・児童養護施設への送致
- 少年院への送致(14歳未満は特に必要と認める場合に限る)
保護処分については「少年法における保護処分はどうなっているのか?」に詳しくまとめてあります。