公認心理師は、公認心理師法に基づく国家資格です。その国家試験を受けるためには、受験資格を得る必要があります。
また、公認心理師法では、公認心理師になることができない者の規定(欠格事由)も存在しています。
公認心理師法で規定されている受験資格、欠格事由はどのようなものでしょうか?
公認心理師試験の受験資格
公認心理師試験の受験資格については、公認心理師法第7条に書かれています。第1項~第3項の3ルートが規定されています。
第七条
『公認心理師法』
試験は、次の各号のいずれかに該当する者でなければ、受けることができない。
第1号
学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に基づく大学(短期大学を除く。以下同じ。)において心理学その他の公認心理師となるために必要な科目として文部科学省令・厚生労働省令で定めるものを修めて卒業し、かつ、同法に基づく大学院において心理学その他の公認心理師となるために必要な科目として文部科学省令・厚生労働省令で定めるものを修めてその課程を修了した者その他その者に準ずるものとして文部科学省令・厚生労働省令で定める者
第2号
学校教育法に基づく大学において心理学その他の公認心理師となるために必要な科目として文部科学省令・厚生労働省令で定めるものを修めて卒業した者その他その者に準ずるものとして文部科学省令・厚生労働省令で定める者であって、文部科学省令・厚生労働省令で定める施設において文部科学省令・厚生労働省令で定める期間以上第二条第一号から第三号までに掲げる行為の業務に従事したもの
第3号
文部科学大臣及び厚生労働大臣が前二号に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認定した者
第7条第1号の規定は、公認心理師養成カリキュラムのある大学を卒業し、同じく養成カリキュラムのある大学院を修了することで得られる受験資格です。第7条第1号はいわゆるAルートで、大学+大学院のルートです。
第7条第2号の規定は、公認心理師養成カリキュラムのある大学を卒業し、認定施設で2年以上の実務経験を積むことで得られる受験資格です。第7条第2号はいわゆるBルートで、大学+実務経験のルートです。
第7条第3号の規定は、第7条第1号・第2号と同等以上と認められた場合の受験資格です。この第7条第3号はCルートと呼ばれます。
まとめると次のようになります。
- Aルート(養成大学+養成大学院ルート)
養成カリキュラムのある大学を卒業し、養成カリキュラムのある大学院を修了 - Bルート(養成大学+実務経験ルート)
養成カリキュラムのある大学を卒業し、認定施設で2年以上の実務経験 - Cルート(A・Bと同等ルート)
Aルート・Bルートと同等以上と認められた場合
ここまでが公認心理師法施行後のルートです。「正規ルート」と呼んでもいいかもしれません。これから大学に入学する場合は、AルートかBルートを選択することになります。
その他にも経過措置として認められる受験資格があり、公認心理師法附則第2条に書かれています。その中で現任者ルート(Gルート)は5年間の期限付きとなっています。
経過措置の受験資格は次の4つです。
- Dルート(大学院ルート)
法施行前に大学院を修了(附則2条第1項第1号)または入学(附則第2条第1項第2号)し、省令で定める科目を履修 - Eルート(大学+養成大学院ルート)
法施行前に大学に入学し省令で定める科目を履修し、養成カリキュラムのある大学院を修了(附則第2条第1項第3号) - Fルート(大学+実務経験ルート)
法施行前に大学に入学し省令で定める科目を履修し、認定施設で2年以上の実務経験(附則第2条第1項第4号) - Gルート(現任者ルート)
5年以上の実務経験、ただし受験資格は法施行後5年間(附則第2条第2項)
受験資格の詳細は「公認心理師になるには?資格取得までのルートを解説!」で説明してあります。
公認心理師法における欠格事由
上記のように、公認心理師試験を受けるには受験資格を得る必要があります。しかし、受験資格を持っていて、試験に合格すれば誰でも公認心理師になれるわけではありません。
公認心理師法には欠格事由の規定があるからです。
欠格事由は公認心理師法第3条に書かれています。
第3条
『公認心理師法』
次の各号のいずれかに該当する者は、公認心理師となることができない。
第1号
心身の故障により公認心理師の業務を適正に行うことができない者として文部科学省令・厚生労働省令で定める者
第2号
禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して二年を経過しない者
第3号
この法律の規定その他保健医療、福祉又は教育に関する法律の規定であって政令で定めるものにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して二年を経過しない者
第4号
第三十二条第一項第二号又は第二項の規定により登録を取り消され、その取消しの日から起算して二年を経過しない者
欠格事由(第3条第1号)
第3条第1号の規定は改正されていて、現在のものが2019年12月14日に施行されています。その前は「成年被後見人又は被保佐人」となっていました。
そこに書かれている「文部科学省令・厚生労働省令」は公認心理師法施行規則で、こちらも改正され、2019年12月14日に施行されています。
第1条
『公認心理師法施行規則』
公認心理師法(以下「法」という。」)第三条第一号の文部科学省令・厚生労働省令で定める者は、精神の機能の障害により公認心理師の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者とする。
公認心理師法第3条第1号の欠格事由の要点は次の通りです。
- 精神の機能の障害によるもので
- 業務を適正に行うために必要な認知、判断、意思疎通を適切に行えない
この改正に伴い、従来の公認心理師法施行規則第1条が第1条の2となり、その他の条文にあった「第1条」が「第1条の2」と変更されています。
第3条第1号の欠格事由の改正について
公認心理師法第3条第1号の欠格事由の改正は2019年12月14日に施行となっています。
その理由は、「公認心理師施行規則の一部を改正する省令」によると、成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律が一部施行されたことにより、公認心理師法が改正されたことに基づくものだそうです。
2020年6月21日(水)に行われる第3回公認心理師国家試験以降の国家試験で出題された場合、欠格事由として「成年被後見人及び被保佐人」と書かれていたら間違いとなるので注意が必要です。
欠格事由(第3条第2号)
第3条第2項の規定は、禁固以上の刑に処せられた人を対象としたものです。ただし、対象となった人が公認心理師に一生なれないわけではなく、刑の執行が終わって2年経過するまでという限定がついています。
欠格事由(第3条第3号)
第3条第3号の規定は、公認心理師法と保健医療・福祉・教育に関する法律により、罰金の刑に処された人を対象としたものとなっています。こちらも刑の執行後2年という限定があります。
具体的な法律に関しては、公認心理師法施行令に書かれています。
第1条
『公認心理師法施行令』
公認心理師法(以下「法」という。)第三条第三号の保健医療、福祉又は教育に関する法律の規定であって政令で定めるものは、次のとおりとする。
第1号 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)の規定
第2号 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)の規定
第3号 医師法(昭和二十三年法律第二百一号)の規定
第4号 歯科医師法(昭和二十三年法律第二百二号)の規定
第5号 保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)の規定
第6号 医療法(昭和二十三年法律第二百五号)の規定
第7号 教育職員免許法(昭和二十四年法律第百四十七号)の規定
第8号 社会教育法(昭和二十四年法律第二百七号)の規定
第9号 身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)の規定
第10号 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)の規定
第11号 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)の規定
第12号 義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法(昭和二十九年法律第百五十七号)の規定
第13号 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)の規定
第14号 薬剤師法(昭和三十五年法律第百四十六号)の規定
第15号 老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)の規定
第16号 社会福祉士及び介護福祉士法(昭和六十二年法律第三十号)の規定
第17号 介護保険法(平成九年法律第百二十三号)の規定
第18号 精神保健福祉士法(平成九年法律第百三十一号)の規定
第19号 国立大学法人法(平成十五年法律第百十二号)の規定
第20号 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)の規定
第21号 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第七十七号)の規定
第22号 国家戦略特別区域法(平成二十五年法律第百七号)第十二条の五第十五項及び第十七項から第十九項までの規定
第23号 民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律(平成二十八年法律第百十号)の規定
欠格事由(第3条第4号)
第3条第4号の規定は、公認心理師資格の登録を取り消された人を対象としています。こちらも取り消しから2年以内となっています。
条文にある第32条には次のように書かれています。
第32条第1項
『公認心理師法』
文部科学大臣及び厚生労働大臣は、公認心理師が次の各号のいずれかに該当する場合には、その登録を取り消さなければならない。
第1号
第三条各号(第四号を除く。)のいずれかに該当するに至った場合
第2号
虚偽又は不正の事実に基づいて登録を受けた場合
第2項
文部科学大臣及び厚生労働大臣は、公認心理師が第四十条、第四十一条又は第四十二条第二項の規定に違反したときは、その登録を取り消し、又は期間を定めて公認心理師の名称及びその名称中における心理師という文字の使用の停止を命ずることができる。
第32条第2項にある第40条、第41条、第42条第2項は公認心理師の義務に関するもので、信用失墜行為の禁止(第40条)、秘密保持義務(第41条)、医師の指示(第42条第2項)です。
これらは「命ずることができる」とあるので、必ず取り消し・名称の使用停止があるわけではありません。
しかし、虚偽・不正で公認心理師登録を受けた場合は、必ず登録を取り消されることになります。