少年法における家庭裁判所の調査はどのように行われるのか?

少年法は、すべての事件を家庭裁判所に送致するという全件送致主義となっています。事件を送致された家庭裁判所には調査が義務づけられています。

少年法における家庭裁判所の調査はどのように行われるのでしょうか?

家庭裁判所の調査の対象となる「非行少年」(審判に付すべき少年)については、「少年法の目的と少年の定義、非行少年の分類」に書いてあります。

家庭裁判所の調査

家庭裁判所の調査については、少年法第8条に書かれています。

第8条
審判に付すべき少年があると思料するときは、事件について調査しなければならない。検察官、司法警察員、警察官、都道府県知事又は児童相談所長から家庭裁判所の審判に付すべき少年事件の送致を受けたときも、同様とする。
第2項
家庭裁判所は、家庭裁判所調査官に命じて、少年、保護者又は参考人の取調その他の必要な調査を行わせることができる。

少年法

審判に付すべき少年の事件について、家庭裁判所は調査しなければならないという義務を負っています。それは送致を受けたときも同じです。

その調査は、家庭裁判所調査官に命じて行わせることができるとされています。

少年事件の調査のやり方

少年法は、少年の健全な育成を目的としているため、大人に対する対応とは異なります。

少年事件の調査のやり方にもそれが反映されています。

第9条
前条の調査は、なるべく、少年、保護者又は関係人の行状、経歴、素質、環境等について、医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的智識特に少年鑑別所の鑑別の結果を活用して、これを行うように努めなければならない。

少年法

少年本人だけでなく、保護者や関係している人、経歴、素質、環境といったことについて、医学・心理学・教育学・社会学などの知識を活用して調査することになっています。

少年鑑別所の鑑別も重要なものとして位置づけられています。

少年鑑別所

家庭裁判所の調査は、家庭裁判所調査官だけでなく、少年鑑別所が担うこともあります。少年鑑別所については、少年法第17条に書かれています。

第17条
家庭裁判所は、審判を行うため必要があるときは、決定をもつて、次に掲げる観護の措置をとることができる。
1号
家庭裁判所調査官の観護に付すること。
2号
少年鑑別所に送致すること。

少年法

家庭裁判所は観護措置として、家庭裁判所調査官の観護と少年鑑別所への送致をすることができるということです。『【ブループリント網羅】公認心理師必携テキスト』(p.542)によれば、後者の場合がほとんどだそうです。

少年鑑別所については、少年鑑別所法があるので、必要に応じて確認するといいでしょう。

少年鑑別所に収容できる期間

少年鑑別所に収容できる期間については、少年法第17条第3項に規定があります。

第17条第3項
第一項第二号の措置においては、少年鑑別所に収容する期間は、二週間を超えることができない。ただし、特に継続の必要があるときは、決定をもつて、これを更新することができる。

少年法

原則は2週間ですが、必要に応じて更新ができることになっています。更新については、少年法第17条第4項に書かれています。

第17条第4項
前項ただし書の規定による更新は、一回を超えて行うことができない。ただし、第三条第一項第一号に掲げる少年に係る死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件でその非行事実(犯行の動機、態様及び結果その他の当該犯罪に密接に関連する重要な事実を含む。以下同じ。)の認定に関し証人尋問、鑑定若しくは検証を行うことを決定したもの又はこれを行つたものについて、少年を収容しなければ審判に著しい支障が生じるおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある場合には、その更新は、更に二回を限度として、行うことができる。

少年法

少年鑑別所の収容期間更新は原則1回までとなっています。

例外としては、少年法第3項第1項第1号の少年(犯罪少年)で、死刑・懲役・禁錮に当たる罪の事件の場合です。

その場合、証人尋問・鑑定・検証を行うことが決定がなされ、収容しなければ審判に著しい支障があるときに限り、さらに2回更新できるとされています。

ここについては少しややこしいので、『公認心理師エッシェンシャルズ』から引用します。

観護措置の決定により、少年を少年鑑別所に送致して原則2週間、通常延長して4週間、最長で8週間収容し、資質鑑別を求めることができる。(p.150)

『公認心理師エッシェンシャルズ』

少年鑑別所に収容できる期間は原則2週間で、必要がある場合は4週間に延長することができます。

さらに、犯罪少年で死刑・懲役・禁錮に当たる罪の事件の場合、収容期間を最大2回(2週間+2週間の合計4週間)更新することができるということです。

最初の2週間と原則1回の更新分の2週間、そして例外の4週間を合わせて、最長で8週間収容し、鑑別を行うことが可能です。

まとめ

家庭裁判所は審判に付すべき少年の事件と、送致された少年の事件について、調査を行わなければなりません。

その調査結果に基づいて、審判の要否を検討することになります。

  • 家庭裁判所は審判に付すべき少年の事件、送致された少年の事件を調査しなければならない。
  • 家庭裁判所は家庭裁判所調査官に調査を命じることができる。
  • 家庭裁判所の調査は、少年本人、家族や関係者、環境等について、医学・心理学・教育学・社会学等を活用する。
  • 家庭裁判所の調査は少年鑑別所の鑑別の結果を活用することができる。
  • 少年鑑別所の収容期間は原則2週間、更新1回の4週間。
  • 犯罪少年で死刑・懲役・禁錮の罪の事件の場合、さらに収容期間を2回更新することができ、最長で8週間の収容になる。

家庭裁判所の調査の後に行われる審判については、「少年法における家庭裁判所の審判とその決定」に書いてあります。


少年法と少年の刑事事件まとめ【公認心理師試験対策】