家庭裁判所の審判には保護処分という決定があります。少年法における保護処分とはどのようなものなのでしょうか?
少年法では、保護観察所の保護観察、児童自立支援施設又は児童養護施設への送致、少年院への送致、という3つの保護処分があります。
3つの保護処分は、家庭裁判所の審判で決定されます。それぞれの保護処分について見ていきましょう。
少年法における保護処分
家庭裁判所の審判で決定される保護処分は3種類あります。
第24条
少年法
家庭裁判所は、前条の場合を除いて、審判を開始した事件につき、決定をもつて、次に掲げる保護処分にしなければならない。ただし、決定の時に十四歳に満たない少年に係る事件については、特に必要と認める場合に限り、第三号の保護処分にすることができる。
第1号
保護観察所の保護観察に付すること。
第2号
児童自立支援施設又は児童養護施設に送致すること。
第3号
少年院に送致すること。
少年法第24条にある通り、保護処分は、保護観察所の保護観察、児童自立支援施設・児童養護施設への送致、少年院への送致の3種類となっています。
それぞれの保護処分について見ていきましょう。
保護観察所の保護観察
保護観察所の保護観察は、少年法ではなく、更生保護法に規定されています。更生保護法には保護観察の対象者について、次のように書かれています。
第48条
保護観察法
次に掲げる者(以下「保護観察対象者」という。)に対する保護観察の実施については、この章の定めるところによる。
1号
少年法第二十四条第一項第一号の保護処分に付されている者(以下「保護観察処分少年」という。)
2号
少年院からの仮退院を許されて第四十二条において準用する第四十条の規定により保護観察に付されている者(以下「少年院仮退院者」という。)
3号
仮釈放を許されて第四十条の規定により保護観察に付されている者(以下「仮釈放者」という。)
4号
刑法第二十五条の二第一項若しくは第二十七条の三第一項又は薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律第四条第一項の規定により保護観察に付されている者(以下「保護観察付執行猶予者」という。)
少年法に関係するのは、第1号の保護観察処分少年と、第2号の少年院仮退院者です。
その2つと並んで少年以外の保護観察対象者も書かれていることからわかるように、少年でも刑事司法と同じ更生保護法で保護観察が規定されているということです。
少年の保護観察の実施方法については、更生保護法第49条第2項に書かれています。
第49条第2項
保護観察法
保護観察処分少年又は少年院仮退院者に対する保護観察は、保護処分の趣旨を踏まえ、その者の健全な育成を期して実施しなければならない。
保護観察は更生保護法第49条第1項に「保護観察対象者の改善更生を図ることを目的として」とあり、少年の場合はさらに保護処分の趣旨を踏まえることになっています。
『【ブループリント網羅】公認心理師必携テキスト』には、少年の保護観察について、次のように書かれています。
少年を施設へ収容せず、従来どおりの生活を送らせるなかで、少年の更生をはかる。保護観察官や保護司が定期的に少年と面会する。(p.542)
『公認心理師必携テキスト』
保護観察は普通の生活の中で少年の更生を図るものということです。そのために、保護観察官や保護司が定期的に面会することになっています。
児童自立支援施設又は児童養護施設への送致
2つ目の保護処分は児童自立支援施設又は児童養護施設への送致です。どちらも児童福祉法に基づく施設なので、児童福祉法が関係してきます。
児童自立支援施設は、児童福祉法第44条に規定があります。
第44条
児童福祉法
児童自立支援施設は、不良行為をなし、又はなすおそれのある児童及び家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童を入所させ、又は保護者の下から通わせて、個々の児童の状況に応じて必要な指導を行い、その自立を支援し、あわせて退所した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設とする。
児童自立支援施設は、不良行為をする、あるいはそのおそれのある児童が入所あるいは通所して、必要な指導を受ける施設です。児童の自立を支援し、退所者の相談・援助を目的としたものとなっています。
児童養護施設は、児童福祉法第41条に規定があります。
第41条
児童福祉法
児童養護施設は、保護者のいない児童(乳児を除く。ただし、安定した生活環境の確保その他の理由により特に必要のある場合には、乳児を含む。以下この条において同じ。)、虐待されている児童その他環境上養護を要する児童を入所させて、これを養護し、あわせて退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行うことを目的とする施設とする。
児童養護施設は、保護者のいない児童や虐待されている児童などが入所する施設です。そのような児童を養護すること、退所者の相談・援助を目的としています。
それぞれ目的が違う施設ですが、児童自立支援施設又は児童養護施設への送致は児童福祉法に基づく施設で、少年の指導あるいは養護を行うことを目的とした保護処分ということなのでしょう。
少年院への送致
最後に、少年院への送致です。少年院については、少年院法に規定されています。少年院法の目的は第1条に、次のように書かれています。
第1条
少年院法
この法律は、少年院の適正な管理運営を図るとともに、在院者の人権を尊重しつつ、その特性に応じた適切な矯正教育その他の在院者の健全な育成に資する処遇を行うことにより、在院者の改善更生及び円滑な社会復帰を図ることを目的とする。
この条文からわかるように、少年院は少年の更生のための施設ということになります。
少年院は、第1種~第4種の4つに分かれています。
- 第1種:心身に著しい障害がない概ね12歳以上23歳未満
- 第2種:心身に著しい障害がない犯罪的傾向が進んだ概ね16歳以上23歳未満
- 第3種:心身に著しい障害がある概ね12歳以上26歳未満
- 第4種:少年院における刑の執行
少年院については、「少年院の目的・種類・矯正教育・社会復帰支援」にまとめてあります。
まとめ
家庭裁判所の審判で決定される保護処分は次の3つです。
- 保護観察所の保護観察
- 自立支援施設又は児童養護施設への送致
- 少年院への送致
保護処分について見てみるとわかる通り、少年事件については複数の法律が連動しているので、1つの法律だけを覚えればいいというものではありません。
法律的にどのような流れで非行少年に対する対応が決定されていくのかを理解することが、公認心理師国家試験の試験対策として役に立つでしょう。