高齢者福祉における福祉施設はどの法律を根拠としていて、その機能はどうなっているのでしょうか?
今回は紹介するのは『公認心理師エッセンシャルズ』(p.120~122)に書かれている3つの福祉施設です。
- 介護老人保健施設
- 老人福祉施設
- 地域包括支援センター
それでは、高齢者福祉領域の福祉施設を見ていきましょう。
介護老人保健施設
介護老人保健施設の根拠法、機能はどうなっているのでしょうか?
介護老人保健施設の根拠法
根拠となる法律:介護保険法
介護老人保健施設は介護保険法を根拠としています。介護保険法第8条第28項にその規定があります。
第8条第28項
介護保険法
この法律において「介護老人保健施設」とは、要介護者であって、主としてその心身の機能の維持回復を図り、居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者(その治療の必要の程度につき厚生労働省令で定めるものに限る。以下この項において単に「要介護者」という。)に対し、施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設として、第九十四条第一項の都道府県知事の許可を受けたものをいい、「介護保険施設サービス」とは、介護老人保健施設に入所する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて行われる看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話をいう。
介護老人保健施設は都道府県知事の許可が必要な施設です。
対象者は厚生労働省令で定められている「要介護者」になります。
介護老人保健施設の機能
介護老人保健施設は、対象である、心身の機能の維持回復を図って居宅で生活できるようにするための支援が必要な要介護者に対してサービスを提供しています。
提供するサービスは、介護、機能訓練、医療、日常生活上の世話となっています。
『公認心理師エッセンシャルズ』ではさらにわかりやすく説明されています。
在宅での生活が困難な高齢者及び特定疾患により機能低下が生じた者を対象に、在宅復帰に向けたリハビリテーションを実施する。(中略)利用者の多くは認知症であることが多く、身体介護(寝たきりを含む)が必要な利用者も多い。(p.122)
『公認心理師エッセンシャルズ』
在宅復帰に向けたリハビリを実施するのが介護老人保健施設となっています。認知症の人が多く、身体介護が必要な人も多いというのが現状のようです。
さらに、「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」には次のようにも書かれています。
第1条の2
介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準
介護老人保健施設は、施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことにより、入所者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにするとともに、その者の居宅における生活への復帰を目指すものでなければならない。
公認心理師エッセンシャルズに書かれていた「在宅復帰に向けた」という記述は、「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準にある、「居宅における生活への復帰を目指す者でなければならない」というところを指しているのでしょう。
老人福祉施設
老人福祉施設の根拠法、機能はどうなっているのでしょうか?
老人福祉施設の根拠法
根拠となる法律:老人福祉法
老人福祉施設は老人福祉法を根拠とする福祉施設です。その中にはいくつかの施設が含まれています。
第5条の3
老人福祉法
この法律において、「老人福祉施設」とは、老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、老人福祉センター及び老人介護支援センターをいう。
老人福祉法で規定されている老人福祉施設は7種類あります。
- 老人デイサービスセンター
- 老人短期入所施設
- 養護老人ホーム
- 特別養護老人ホーム
- 軽費老人ホーム
- 老人福祉センター
- 老人介護支援センター
老人福祉施設の機能
老人福祉施設の機能はそれぞれの施設で異なっていますが、老人福祉のための機能を有しています。
地域包括支援センター
地域包括支援センターの根拠法、機能はどうなっているのでしょうか?
地域包括支援センターの根拠法
根拠となる法律:介護保険法
地域包括支援センターは介護保険法が根拠となっています。名前だけではよくわかりませんが、介護の関連した施設です。
第115条の46
介護保険法
地域包括支援センターは、第一号介護予防支援事業(居宅要支援被保険者に係るものを除く。)及び第百十五条の四十五第二項各号の掲げる事業(以下「包括的支援事業」という。)その他厚生労働省令で定める事業を実施し、地域住民の心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、その保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的とする施設とする。
第2項
市町村は、地域包括支援センターを設置することができる。
地域包括支援センターは市町村が設置できるものとなっています。「設置することができる」なので、設置は義務ではありません。
地域住民のために、保健医療の向上、福祉の増進を包括的に支援することを目的とした施設が、地域包括支援センターです。
地域包括支援センターの機能
地域包括支援センターは、上記の介護保険法第115条の46にあるように、3つの事業を行うことになっています。
- 第1号介護予防支援事業(居宅要支援被保険者に係るものを除く)
- 介護保険法第115条の45条第2項各号にある事業
- 法制労働省令で定める事業
介護保険法第115条の45第2項は次のようになっています。
第115条の45第2項
介護保険法
市町村は、介護予防・日常生活支援総合事業のほか、被保険者が要介護状態等となることを予防するとともに、要介護状態等となった場合においても、可能な限り、地域において自立した日常生活を営むことができるよう支援するため、地域支援事業として、次の掲げる事業を行うものとする。
第1号
被保険者の心身の状況、その居宅における生活の実態その他必要な実情の把握、保健医療、公衆衛生、社会福祉その他の関連施策に関する総合的な情報の提供、関係機関との連絡調整その他の被保険者の保健医療の向上及び福祉の増進を図るための総合的な支援を行う事業
第2号
被保険者に対する虐待の防止及びその早期発見のための事業その他の被保険者の権利擁護のため必要な援助を行う事業
第3号
保健医療及び福祉に関する専門的知識を有する者による被保険者の居宅サービス計画及び施設サービス計画の検証、その心身の状況、介護給付等対象サービスの利用状況その他の状況に関する定期的な協議その他の取組を通じ、当該被保険者が地域において自立した生活を営むことができるよう、包括的かつ継続的な支援を行う事業
第4号
医療に関する専門的知識を有する者が、介護サービス事業者、居宅における医療を提供する医療機関その他の関係者の連携を推進するものとして厚生労働省令で定める事業(前号に掲げる事業を除く。)
第5号
被保険者の地域における自立した日常生活の支援及び要介護状態等となることの予防又は要介護状態等の軽減若しくは悪化の防止に係る体制の整備その他のこれらを促進する事業
第6号
保健医療及び福祉に関する専門的知識を有する者による認知症の早期における症状の悪化の防止のための支援その他の認知症である又はその疑いのある被保険者に対する総合的な支援を行う事業
介護保険法第115条の45第2項各号に書かれている事業は6つです。
「地域包括支援センターの設置運営について」にはこれらの業務(地域包括支援事業)について、次のように書かれています。
- 総合相談支援業務(法第111条の45第2項第1号)
- 権利擁護業務(法第115条の45第2項第2号)
- 包括的・継続的ケアマネジメント支援業務(法第115条の45第2項第3号)
- 在宅医療・介護連携推進事業(法第115条の45第2項第4号)
- 生活支援体制整備事業(法第115条第2項第5号)
- 認知症総合支援事業(法第115条の45第2項第6項)
地域包括支援センターの設置運営について
これらの業務に加えて、第1号介護予防支援事業があります。
まとめると、地域包括支援センターの機能は次のようになります(1は介護予防支援事業、2~6は地域包括支援事業)。
- 介護予防支援
- 総合相談支援
- 権利擁護
- 包括的・継続的ケアマネジメント支援
- 在宅医療・介護連携推進
- 生活支援体制整備
- 認知症総合支援
まとめ
介護老人保健施設
- 根拠法:介護保険法
- 機能:介護、機能訓練、医療、日常生活上の世話
老人福祉施設
- 根拠法:老人福祉法
- 機能:老人福祉(施設によって異なる)
地域包括支援センター
- 根拠法:介護保険法
- 機能:
介護予防支援
総合相談支援
権利擁護
包括的・継続的ケアマネジメント支援
在宅医療・介護連携推進
生活支援体制整備
認知症総合支援