臨床心理は心理的な不調を改善することが大きな目標の1つですが、「予防」という視点も重要です。
身体的な健康で予防的に生活習慣や運動習慣などを改善することが注目されるように、心理的な健康でも予防的アプローチも必要になります。
今回は、キャプラン(Caplan, G.)の予防モデルにある、一次予防、二次予防、三次予防について説明します。
キャプラン(Caplan, G.)の予防的アプローチ、予防のモデル
キャプラン(Caplan, G.)は予防を3段階に分けました。それぞれ、一次予防、二次予防、三次予防と呼ばれています。
「予防」という名前が付いていますが、一次予防~三次予防は何を予防するかという視点で見ていくと理解しやすいと思います。単に、心理的な問題が起こったり、精神疾患になったりしないように予防するという意味ではないことを意識しながら、それぞれについて見ていきましょう。
一次予防とは?
一次予防は、一般市民全体を対象とした、問題の発生を予防することを指します。予防の最も基礎的な部分を構成しています。
『公認心理師必携テキスト』(p.421)では、『予防精神医学』(カプラン:予防精神医学(新福尚武監訳), 朝倉書店, 1970)を引用して、次のように書かれています。
危機的状況の発生予防のこと。講演会の実施や広報活動を通じて広く啓発活動を行う。地域住民らがコミュニケーションが取れる場を開拓する。
『公認心理師必携テキスト』
一般的に使われる意味での予防が「一次予防」になります。
心理学では人の心理について多くのことがわかってきています。一次予防では、それらを活用しなら、危機的状況が発生しないように予防することになります。
公認心理師の業務との関係で言えば、公認心理師法第2条第4項に当てはまる活動と言えるでしょう。
第2条第4項
公認心理師法
心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。
二次予防とは?
一次予防は問題発生の予防でしたが、二次予防はハイリスク群を対象とした、問題が深刻化することの予防です。
『公認心理師必携テキスト』(p.421)では、『予防精神医学』(カプラン:予防精神医学(新福尚武監訳), 朝倉書店, 1970)を引用して、次のように書かれています。
重篤化予防のこと。問題が深刻化する前に介入し、問題を最小限に抑えることを目指す。早期発見・早期対応が目指される。定期健診などの形式で行われる。
『公認心理師必携テキスト』
二次予防は問題の重篤化・深刻化の予防です。身体疾患もそうですが、早期発見・早期対応が重要になります。
『公認心理師必携テキスト』には、児童虐待に対する二次予防の代表例として、乳幼児の1か月健診などの定期健診が挙げられています。
三次予防とは?
三次予防は再発の予防を指します。対象は、問題発生状況にある人、その人が住むコミュニティです。
『公認心理師必携テキスト』(p.421)では、『予防精神医学』(カプラン:予防精神医学(新福尚武監訳), 朝倉書店, 1970)を引用して、次のように書かれています。
再発予防のこと。問題の再発予防を目指したリハビリテーションを行うこと。または、対象者が所属するコミュニティの変革・改善により環境の整備を行う。
『公認心理師必携テキスト』
心理的な問題や精神疾患は改善すればいいというものではなく、再発予防が重要なテーマになります。そのためには対象者だけでなく、コミュニティへのアプローチも必要になってきます。
そのため、三次予防にはソーシャルワークの視点が入っていると思われます。この段階では、公認心理師などの心理職だけでなく、ソーシャルワーカーなどの福祉職などと連携した支援が重要になるでしょう。