心の理論は、自閉症との関係が言われたりするなど、心理学では重要なトピックの1つだと思います。その心の理論をいつ獲得するのかということは、公認心理師国家試験に出るのでしょうか?
心の理論がどのようなものなのか、心の理論を獲得する年齢はどうなっているのかについて説明して、公認心理師国家試験に出題されるかを考えてみます。
心の理論とは?
有斐閣の『心理学辞典』では、心の理論について次のように説明されています。
いろいろな心的状態を区別したり、心の働きや性質を理解する知識や認知的枠組みをいう。(p.269)
『心理学辞典』有斐閣
誤解を恐れずにものすごく簡単に言ってしまえば、「他人の心を想像できるか」ということに関わるものと言えます。
行動分析学、特に臨床行動分析や関係フレーム理論では、心の理論を視点取り・視点取得(perspective taking)との関係で語られています。
心の理論を獲得する年齢
心の理論を獲得する年齢を知るためには、心の理論が獲得された状態を定義する必要があります。
その1つの方法として「誤信念課題」と呼ばれるものがあります。
誤信念課題の中でも、バロン=コーエンらのサリーとアン課題はよく知られていると思います。誤信念課題をパスすることができたら、心の理論を獲得していると見なせるということです。
誤信念課題をパスできる年齢について、『公認心理師必携テキスト』には次のように書かれています。
誤信念課題に関する数多くの研究の結果、4歳より下の子どもは正しく回答できないことが明らかにされてきた。(p.66)
『公認心理師必携テキスト』
数多くの研究から、4歳未満では誤信念課題を正しく回答できないことがわかっています。
さらに、メタ分析でもそれが確かめられています。
ウェルマンらは、誤信念課題を用いた178の研究を取り上げて、メタ分析を行っている。その結果、3歳での課題の正答率が低いこと、また信念や思考の理解よりも欲求や感情の理解のほうが先に獲得されることが明らかとなっている。(p.66)
『公認心理師必携テキスト』
これらのことから、心の理論を獲得するのは4歳頃と結論づけることができそうです。
しかし、これらの研究とは一致しない結果も出ています。
『公認心理師必携テキスト』には次のように書かれています。
心の理論の獲得時期については非言語的なものであれば15か月児においても誤信念を理解していることが明らかにされるなど、その後、さまざまな研究結果が出てきており、一致した見解が見られていないのが現状である。(p.66)
『公認心理師必携テキスト』
非言語的なものであれば15か月児でも誤信念を理解していることが明らかになっているということは、心の理論をどのように定義するかという問題にも関係してくるかもしれません。
一般に「心の理論」と言うときには、非言語的なものも含まれると思われるため、心の理論を獲得する年齢について一致した見解が得られていないということになります。
心の理論を獲得する年齢は公認心理師国家試験で出題されるか?
ここまで見てきたように、心の理論を獲得する年齢について一致した見解が得られていません。
国家試験には解答に根拠がある問題が出題されるはずなので、おそらく「心の理論を獲得する年齢は?」という単純な問題は出題されないでしょう。
ただし、誤信念課題の条件と通過する年齢については出題される可能性があります。
サリーとアン課題に代表されるタイプの誤信念課題は4歳以上で通過割合が上昇すること、非言語的な誤信念課題であれば15か月児も通貨できることなどを覚えておくといいでしょう。
また、二次的信念課題についても覚えておくことをオススメします。