明るさとコントラストの知覚はどのようになっているのでしょうか?
明るさの知覚では明順応と暗順応が有名です。また、プルキンエ現象と呼ばれる現象も知られています。
コントラストの知覚では、明るさの対比効果、マッハ現象などがあります。
今回は、明るさとコントラストの知覚について、次のものを取り上げて説明します。
- 明順応と暗順応
- プルキンエ現象
- 明るさの対比効果
- マッハ現象
明るさの知覚
明るさの知覚というのは、明るく感じるか、暗く感じるかというようなものです。
明るさの知覚のもとになっているのは光です。光の知覚は網膜上の錐体細胞と桿体細胞が関係しています。
明るさと光、その近くに関して、『心理学検定基本キーワード改訂版』には次のように書かれています。
一般に、物理エネルギーが大きい光はより明るく知覚される。また、同じエネルギー量であっても、網膜に投影させる面積が大きい光ほどより明るく知覚される。(p.72)
『心理学検定基本キーワード改訂版』
物理エネルギーが大きい光と小さい光を比べると、物理エネルギーが大きい光の方が明るく知覚されます。それだけでなく、網膜に投影される面積が大きいほど明るく知覚されることがわかっています。
明順応と暗順応
明るさの知覚では、明順応と暗順応と呼ばれる現象があります。
明順応
暗い場所から明るい場所に行ったとき、最初はまぶしく感じますが、しばらくすると慣れてきてまぶしさが軽減されてきます。
この現象を「明順応」と呼びます。有斐閣の『心理学辞典』では次のように説明されています。
暗い所では桿体が機能し、明るい所では錐体が機能するという分業体制が成立しているが、桿体から錐体へと機能が移行する過程で生じる現象である。(p.827)
『心理学辞典』有斐閣
視細胞である桿体細胞は暗所視、錐体細胞は明所視と関係しています。
暗所視を担っている桿体細胞は錐体細胞と比べて光の敏感に反応します。暗い場所から明るい場所に行ったとき、暗い場所にいるときに働いていた桿体細胞が物理エネルギーが大きい光(明るい光)にさらされて強く反応することになります。そのため、まぶしく感じることになります。
物理エネルギーが大きい光(明るい光)にさらされたことで桿体細胞の働きが弱まり、明所視を担っている錐体細胞の働きが強まります。そのことによって、まぶしさが軽減されます。
このように、暗い場所から明るい場所に行ったときに、その明るさに順応することを「明順応」と呼びます。
暗順応
明るい場所から暗い場所に行ったときは、明順応と反対の反応が起こります。
最初は真っ暗で何も見えなくても、少しずつ慣れてきて周囲の様子が見えるようになってきます。この現象を「暗順応」と呼びます。
有斐閣の『心理学辞典』には次のように書かれています。
明るい所では錐体が機能し、暗い所では桿体が機能するという分業体制が成立しているが、桿体の機能が完全に発揮されるようになるまでには時間がかかることから生じる現象である。(p.21)
『心理学辞典』有斐閣
暗順応は明順応と反対に、暗い場所に行ったときに錐体細胞の働きが弱まり、桿体細胞の働きが強まることによって生じる現象です。
明るい場所から暗い場所に行ったときに、その暗さに順応することを「暗順応」と呼びます。
明順応と暗順応にかかる時間
明順応と暗順応はスイッチを切り替えるように一瞬で起こる現象ではありません。錐体細胞あるいは桿体細胞が十分に機能するにはある程度の時間がかかるからです。
さらに、明順応と暗順応ではかかる時間が異なっています。そのことについて、有斐閣の『心理学辞典』に書かれています。
暗順応に比べ、明順応はごく短時間で成立する。(p.827)
『心理学辞典』有斐閣
完全に暗順応するまでには30~40分かかる。(p.21)
『心理学辞典』有斐閣
明順応にかかる時間は確認できませんでしたが、明順応暗順応よりもごく短時間で成立します。
一方、暗順応は完全に順応するまでに30~40分かかります。
プルキンエ現象
網膜上には錐体細胞と桿体細胞があり、それぞれが最大感度を持つ光の波長は異なっています。この違いから生じる現象が「プルキンエ現象」です。
有斐閣の『心理学辞典』には次のように書かれています。
波長と光覚閾の関係を見ると、光覚閾が最少(視感度が最大)の波長は、錐体細胞が550nm付近であるのに対して、桿体細胞が510nm付近とピークがずれている。明所視においては主として錐体細胞、暗所視においては主として桿体細胞が働く。このことから、明るい所では黄色い花が明るく見えているが、暗くなると緑の葉のほうが明るく見えることをプルキンエ(Purkinje, J. E.)が初めて記載したため、このことをプルキンエ移動あるいはプルキンエ現象という。(p.758)
『心理学辞典』有斐閣
光は波長によって異なる色として知覚されます。錐体細胞と桿体細胞では感度が最大になる波長が異なっています。
錐体細胞の働きが強くなっている明るい場所では、錐体細胞の感度が最大である波長の光を明るく感じます。同じように、暗い場所では、桿体細胞の感度が最大である波長を明るく感じます。
有斐閣の『心理学辞典』では、明るい場所では黄色、暗い場所では緑と書かれていますが、『心理学検定一問一答問題集A領域編』には次のように書かれています。
暗い場所では、青色や緑色が相対的に鮮やかに見えるのに対して、明るい場所では黄色や赤色が鮮やかに見える。(p.84)
『心理学検定一問一答問題集A領域編』
また、次のようにも書かれています。
暗くても見えやすいように、道路標識が青色で作成されるなど、プルキンエ現象は日常生活でも活用されている。(p.85)
『心理学検定一問一答問題集A領域編』
プルキンエ現象の活用がよくわかるのは道路標識の1つである案内標識です。
一般道の案内標識は青色、高速道路等の案内標識は緑色になっています。これは夜でも見やすいように色が選択されているということです。
このように、暗い場所では青や緑、明るい場所では黄色や赤が明るく知覚される現象を「プルキンエ現象」と呼びます。
色の知覚については、「色の知覚-加法混色・減法混色、三色説・反対色説・段階説」に書いてあります。
コントラストの知覚
明るさに関係するものとして、コントラストの知覚があります。コントラストの知覚について、『心理学検定基本キーワード改訂版』に次のように書かれています。
明るい領域と暗い領域の区別の知覚をコントラストの知覚と呼ぶ。(p.72)
『心理学検定基本キーワード改訂版』
今回は、コントラストの知覚のうち、明るさの対比効果とマッハ現象を取り上げます。
明るさの対比効果
同じ明るさのものを見ても、その周囲の明るさによって、感じる明るさが変わってきます。この現象自体は、いろいろなところで錯視として目にしたことがあると思います。
例えば、次の図が明るさの対比効果の例です。
中心部分の色は左右で同じですが、左側(背景が黒)の方が明るく見えると思います。
このように、背景の明るさによって明るさの知覚が変わる現象は「明るさの対比効果」と呼ばれます。
マッハ現象
明るさの対比効果は境界部分において強く現れることがわかっています。そのことによって輪郭線が強調される現象をマッハ現象と呼びます。
『心理学検定基本キーワード改訂版』には次のように説明されています。
明るさの対比により、同じ長方形内部においても、暗い長方形に近い右側部位はより明るく知覚される。またこの効果は、それぞれの長方形の境界線部分において特に顕著に現れ、輪郭線を際立たせている。このように、明るさの対比によって輪郭線が強調して知覚される現象を、発見者マッハ(Mach, E.)の名をとって、マッハ現象と呼ぶ。(p.72)
『心理学検定基本キーワード改訂版』
上の図を見ると、輪郭線が際立っていることがわかります。さらに、長方形の右側と左側では明るさが異なっているように見えます。
「明るさの対比によって輪郭線が強調して知覚される現象」をマッハ現象と呼びます。
まとめ
明るさの知覚をまとめると次のようになります。
コントラストの知覚をまとめると次のようになります。