公認心理師などの心理職にとって重要なものの1つとしてアセスメントがあります。アセスメントは公認心理師の業務の1つとして規定されています。
公認心理師が行うアセスメントは、心理学・臨床心理学に基づいたアセスメントです。
臨床心理学におけるアセスメントとはどのようなものなのでしょうか?
公認心理師法とアセスメント
アセスメントは公認心理師の業務として公認心理師法第2条第1項に規定されています。まず、その規定について見てみましょう。
第2条第1項
公認心理師法
心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること
法律上は「アセスメント」という言葉は出てきませんが、公認心理師法第2条第1項の規定はアセスメントを指していることがわかります。
公認心理師になるためには、要支援者の心理状態を観察し、その結果を分析できるようになる必要があります。
臨床心理学におけるアセスメントとは?
公認心理師法の規定は公認心理師の業務についてのものであるため、実際的なアセスメントについてはわかりません。
アセスメントは、心理アセスメントや心理的アセスメントなど、頭に「心理」に関する用語が付くこともあります。また、「心理査定」と呼ばれることもあります。これらのことをここでは「アセスメント」と呼ぶことにします。
臨床心理学におけるアセスメントとはどのようなものかを知るために、いくつかの文献からアセスメントについて書かれている箇所を引用しながら、見ていきましょう。
『公認心理師必携テキスト』でのアセスメントの説明
『公認心理師必携テキスト』では、アセスメントについて次のように説明されています。
心理アセスメント(以下、アセスメントと表記する)とは、心理査定ともよばれ、面接や観察により知り得た情報や、心理検査を用いて得ることができた情報から、クライエントの状態や特性を把握し、評価することを指す。(p.296)
『公認心理師必携テキスト』
アセスメントに用いられるものとして、「面接」、「観察」、「心理検査」が挙げられています。
それらを単に行うことではなく、それらから得られた情報を使って、クライエントの状態や特性を把握し、評価することが「アセスメント」とされています。
単に「心理検査をやりました」というのでは、アセスメントではないということです。
『スタートライン臨床心理学』でのアセスメントの説明
『スタートライン臨床心理学』には、以前は「心理診断」と呼ばれていたものが、「アセスメント」という表現に変わったということが書かれています。
臨床心理学の領域でも、以前は心理診断という言葉が用いられてきた。しかし、「診断」という言葉は医者でなければ行ってはいけない行為、すなわち「医行為」にあたるということで、最近はもっぱら「査定」なしは「アセスメント」ということがば用いられている。(p.73-74)
『スタートライン臨床心理学』
医学的な診断は医師のみに許された行為である「医行為」にあたるため、医師以外は医学的な診断をすることができません。
そのため、「医行為ではない」ことを明確にする目的もあり、心理診断ではなく、アセスメントという表現が使われるようになったということだと思われます。
※看護師は「看護診断」を行っています。
『スタートライン臨床心理学』では、アセスメントを次のように説明しています。
心理学におけるアセスメントでは、たいていの場合、対象となっている人のパーソナリティの査定、知能や発達水準の査定、家族関係の査定、職場や学校等の環境とそれへのかかわり方の査定などを行い、最終的に心理学的援助がその人に有効かどうか(もし自分が担当するならば自分が担当できるかどうか)、より適切な援助はないだろうかなどについて、精神医学的診断の可能性も頭に置きながら評価していくことになる。心理アセスメント=心理テストでは決してありえない。(p.74-75)
『スタートライン臨床心理学』
『スタートライン臨床心理学』には、「アセスメント=心理テストではない」ことが書かれています。
「心理テスト(心理検査)をやりました」だけではアセスメントではないことがここでも明確になっています。
『スタートライン臨床心理学』に書かれているアセスメントの対象となるものは4つです。
- パーソナリティ
- 知能や発達水準
- 家族関係
- 環境とそれへの関わり方
1つの要素だけではアセスメントにはなり得ず、それらの情報から評価していくことがアセスメントと言えるでしょう。
『ベーシック現代心理学 臨床心理学』でのアセスメントの説明
『ベーシック現代心理学 臨床心理学』には、アセスメントについて次のように書かれています。
アセスメントは、単にクライエントの現状を診断するだけではなく、治療計画の立案や具体的な治療方法の決定、そして、実施された治療の効果判定の基礎的な資料を提供するものである。(p.47)
『ベーシック現代心理学 臨床心理学』
『ベーシック現代心理学 臨床心理学』によると、アセスメントには、治療計画の立案や治療方法の決定、効果判定の基礎的な資料の提供も含まれています。
アセスメントの領域としては、『ベーシック現代心理学 臨床心理学』には5つ挙げられています。
- パーソナリティ
- 行動
- 発達
- 病理
- その他(環境、家族、ソーシャルサポートなど)
これらの領域について、治療計画の立案、治療方法の決定、効果判定の基礎的な資料の提供ができるようにアセスメントしていくことになります。
※「治療」という表現は医師が行うもの以外に使用してはいけないというのを見た記憶がありますが、根拠となる資料を見つけることができませんでした。
『心理学辞典』(有斐閣)でのアセスメントの説明
有斐閣の『心理学辞典』では、「心理診断」としてアセスメントについて説明されています。
診断面接や心理検査を行って、症状や心理的障害の特徴を評価し分類することである。(中略)心理診断の実際は、面接や心理検査を通して、その個人の発達的な特徴やパーソナリティの特徴や構造、これまでの対人関係の特徴、現在おかれている心理社会的な状況など、さまざまな側面からその個人とその個人の抱える現在の問題との関係を理解しようとすることであり、適切な治療法の選択や予後の予測につながってくる。(p.460)
『心理学辞典』有斐閣
有斐閣の『心理学辞典』の説明でも、心理検査はアセスメントを構成する要素の1つとなっています。
アセスメントは診断面接や心理検査によって、症状や心理的障害を評価・分類することとなっています。
対象となるものとして挙げられているのは、次の4つです。
- 発達的な特徴
- パーソナリティの特徴や構造
- 対人関係の特徴
- 心理社会的な状況
さまざまな側面からクライエントとクライエントの抱える問題との関係を理解しようとすることがアセスメントです。
まとめ
臨床心理学におけるアセスメントについて、4つの文献から引用しながら見てきました。それぞれ説明の仕方が異なっていますが、そこには共通点があることがわかります。
単に心理検査を行うことだけがアセスメントではなく、さまざまな情報を使ってクライエントの状態や問題について評価することがアセスメントです。
これまで見てきたアセスメントに関する説明をまとめると次のようになります。