公認心理師になるには?資格取得までのルートを解説!

公認心理師になるにはどうすればいいのでしょうか?

公認心理師は2018年9月9日に第1回国家試験が行われました。現在は公認心理師の養成課程を出ていない人のための経過措置が行われているので、資格取得までのルートはわかりにくくなっています。

そこで、公認心理師を取得するまでのルートを解説していきます。

公認心理師とは?

そもそも公認心理師とはどのような資格なのでしょうか?

公認心理師は、心理職の国家資格です。

臨床心理士の存在を知っている人の中には、臨床心理士が国家資格でないことに驚く人もいたりするので、心理職以外にはあまり興味がないことなのでしょうね。

※臨床心理士は、日本臨床心理士資格認定協会が認定する資格です。

公認心理師の試験や登録をする機関は日本心理研修センターで、そこに公認心理師についての説明があります。「公認心理師とは」には、次のように書かれています。

今日、国民の心の健康問題は、複雑かつ多様化しており、それらへの対応が急務となっています。
これらの問題に対し、他の関係者とも連携しながら心理に関する支援を行う国家資格がわが国にはありませんでした。

日本心理研修センター

さまざまな経緯の後、平成27年9月9日に公認心理師法が成立し、平成29年9月15日に施行され、わが国初の心理職の国家資格として、「公認心理師」制度が推進されることになりました。

2018年9月9日に第1回公認心理師国家試験があり、合格発表は11月30日でした。合格者は登録申請をすることで、公認心理師を名乗れるようになります。

2019年2月に公認心理師登録証が発送され、公認心理師として登録されたことが確認されました。

公認心理師は国家資格なので、これからさまざまな制度に組み込まれていくことが予想されます。そのため、心理職あるいはカウンセラーとして働きたい人にとって必須の資格となっていくと思われます。

ただし、公認心理師は名称独占と呼ばれる資格なので、公認心理師でなければできないことはありません。「公認心理師」あるいは「心理師」という名前を使わなければ、誰でも公認心理師と同じことができます。

いつから公認心理師と名乗れるのか?

公認心理師資格はどうやったら取れるのか?

公認心理師の資格を取得するにはいくつかのルートがあります。公認心理師法施行後5年間は経過措置があるので、少し複雑になっています。

経過措置ルート以外の、いわゆる正規ルートでは4年制大学で必要な科目を履修する必要があります。

多くの大学で公認心理師の養成課程を設置しているので、まずは大学の公認心理師養成課程に入学して、必要な単位を履修することになります。

必要な科目を履修して大学を卒業したら、次は2つのルートに分かれます。

1つ目は、大学院に進学するルート。

2つ目は、実務経験を積むルート。

これらとは別に、経過措置のルートが4つ用意してあります。公認心理師法が成立する以前に大学や大学院を出た人たちや、心理職として働いている人たちを救済するルートと言えます。

厚生労働省が公開している「公認心理師カリキュラム等検討会報告書」には、次のような図が掲載されています。

A~Gの7ルート書かれています。このうちA~Cルートが公認心理師法に基づく正規のルートとなっています。

D~Gは経過措置のルートです。

正規ルートについて

正規ルートというのは勝手に名づけているだけで、単に経過措置以外のルートということを意味しています。

その正規ルートは2つあります。どちらも最初は同じで、公認心理師養成課程の大学を卒業することになります。

公認心理師を養成する大学で必要な科目を履修する必要があります。多くの大学が公認心理師の養成課程を設置しているので、他の国家資格を取るために大学進学するのと同じように大学を選ぶといいでしょう。

必要な科目を履修して大学を卒業した後は、2つのルートに分かれます。

養成大学+養成大学院ルート(Aルート)

1つ目はいわゆるAルートと言われる、公認心理師養成カリキュラムのある大学を卒業し、養成カリキュラムのある大学院に進学するルートです。

公認心理師は大学の4年間と、大学院の2年間の計6年間という養成課程が基本になっています。そのため、大学院進学まで見据えた進路選択が必要になります。

養成カリキュラムのある大学院を修了するだけでは受験資格が得られません。必ず養成カリキュラムのある大学と養成カリキュラムのある大学院を出る必要があります。

大学院の修士課程修了になるので、修士号の取得もできます。

養成大学+実務経験ルート(Bルート)

2つ目はいわゆるBルートと言われる、公認心理師養成カリキュラムのある大学を卒業し、認定施設で2年以上の実務経験を積むルートです。

実務経験として認定される施設は公認心理師法施行規則に書かれています。

第5条
法第七条第二号の文部科学省令・厚生労働省令で定める施設は、次に掲げる施設であって、同条第一号に掲げる者と同等以上の第二条各号に掲げる科目に関する専門的な知識及び技能を修得させるものとして文部科学大臣及び厚生労働大臣が認めるものとする。
第1号 学校教育法に規定する学校
第2号 裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)に規定する裁判所
第3号 地域保健法(昭和二十二年法律第百一号)に規定する保健所又は市町村保健センター
第4号 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)に規定する障害児通所支援事業若しくは障害児相談支援事業を行う施設、児童福祉施設又は児童相談所
第5号 医療法(昭和二十三年法律第二百五号)に規定する病院又は診療所
第6号 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)に規定する精神保健福祉センター
第7号 生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)に規定する救護施設又は更生施設
第8号 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)に規定する福祉に関する事務所又は市町村社会福祉協議会
第9号 売春防止法(昭和三十一年法律第百十八号)に規定する婦人相談所又は婦人保護施設
第10号 知的障害者福祉法(昭和三十五年法律第三十七号)に規定する知的障害者更生相談所
第11号 障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和三十五年法律第百二十三号)に規定する広域障害者職業センター、地域障害者職業センター又は障害者就業・生活支援センター
第12号 老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)に規定する老人福祉施設
第13号 青少年の雇用の促進等に関する法律(昭和四十五年法律第九十八号)に規定する無業青少年の職業生活における自立を支援するための施設
第14号 労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)に規定する労働者に対する健康教育及び健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置を講ずる施設
第15号 更生保護事業法(平成七年法律第八十六号)に規定する更生保護施設
第16号 健康保険法等の一部を改正する法律(平成十八年法律第八十三号)附則第百三十条の二第一項の規定によりなおその効力を有するものとされた同法第二十六条の規定による改正前の介護保険法(平成九年法律第百二十三号)に規定する介護療養型医療施設又は介護保険法に規定する介護老人保健施設、介護医療院若しくは地域包括支援センター
第17号 法務省設置法(平成十一年法律第九十三号)に規定する刑務所、少年刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所、婦人補導院若しくは入国者収容所又は地方更生保護委員会若しくは保護観察所
第18号 厚生労働省組織令(平成十二年政令第二百五十二号)に規定する国立児童自立支援施設
第19号 ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法(平成十四年法律第百五号)に規定するホームレス自立支援事業を行う施設
第20号 独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園法(平成十四年法律第百六十七号)に規定する独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園
第21号 発達障害者支援法(平成十六年法律第百六十七号)に規定する発達障害者支援センター
第22号 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)に規定する障害福祉サービス事業、一般相談支援事業若しくは特定相談支援事業を行う施設、基幹相談支援センター、障害者支援施設、地域活動支援センター又は福祉ホーム
第23号 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第七十七号)に規定する認定こども園
第24号 子ども・若者育成支援推進法(平成二十一年法律第七十一号)に規定する子ども・若者総合相談センター
第25号 子ども・子育て支援法(平成二十四年法律第六十五号)に規定する地域型保育事業を行う施設
第26号 前各号に掲げる施設に準ずる施設として文部科学大臣及び厚生労働大臣が認める施設

『公認心理師法施行規則』

これらの施設の中で認定を受けている施設は、2019年12月27日時点で5施設です。これから増えていくと思われます。

公認心理師法第7条第2号に規定する認定施設(厚生労働省)

A・Bルートと同等と認められた場合のルート(Cルート)

正規ルートは基本的にAルートとBルートですが、それらのルートと同等の知識・技能があると認められた場合も受験資格を得ることができます。

経過措置のルートについて

経過措置については、おそらく2つの意味があると思います。

  1. 養成課程ができる前に大学あるいは大学院を出た人たちの救済
  2. 心理職として働いている人たちの救済

その経過措置は、4つにわかれています。

  • 大学院ルート
  • 大学+養成大学院ルート
  • 大学+実務経験ルート
  • 現任者ルート

このうち、現任者ルートだけが5年間の期限付きとなっています。

大学院ルート(Dルート)

大学院ルートはDルートとも呼ばれています。このルートは、公認心理師法が施行される前に大学院に入学した人向けのルートです。そのため、すでに大学院を修了している人も含まれます。

どんな大学院でもいいというわけではなく、「施行前に大学院において省令で定める科目を履修(又は履修中)」という条件があります。これは大学院が単位を読み替えることで対応しています。

公認心理師法が施行されたのが2017年9月15日なので、それ以前に大学院に入学した人が対象です。

この経過措置は、正規ルートの大学院と同等の科目を履修したと見なせる人たちに受験資格を与えるというものです。

このルートでは大学の学部等は問わないので、他学部から臨床心理士の養成大学院に入った人たちも、単位の読み替えができるならこのルートになります。

各大学院が情報を出しているので、それを参照して、証明書を発行してもらう必要があります。その証明書が認められれば、受験資格を得られるということです。

大学院によって単位の読み替えが異なっているので、どこまで過去に遡って読み替えるかで大学院ルートに入れるかどうかが決まります。

大学院は出たけど大学院ルートの受験資格を認められなかった場合は、大学+正規大学院ルート、大学+実務経験ルート、現任者ルートで受験できる可能性があります。

それらのルートでも認められなかった場合は、正規ルートで受験資格を取得することになります。

大学+養成大学院ルート(Eルート)

公認心理師は大学+大学院で養成されるので、すでに大学で心理学を修めていて大学院には行っていないという人も経過措置の対象になります。

大学+養成大学院ルートはEルートとも呼ばれ、大学部分は大学院ルート(Dルート)の大学院部分と同様に、単位の読み替えでの対応となります。

このルートの対象は、「施行前に、4年制大学において政令で定める科目を履修(又は履修中)」の人たちです。

公認心理師法が施行されたのが2017年9月15日なので、それ以前に大学に入学した人が対象です。

このルートでも、大学が単位の読み替えをすることになります。正規ルート(Aルート・Bルート)の大学部分と同等の各藻を履修したと見なせた場合に、このルートが認められます。

その上で、大学院の公認心理師養成課程に入学し、必要な科目を履修して修了(卒業)することで、受験資格を得ることができます。

大学+実務経験ルート(Fルート)

大学+実務経験ルートは、Fルートとも呼ばれます。

このルートの大学部分は大学+養成大学院ルート(Eルート)と同じで、公認心理師法施行前に入学して、単位の読み替えによって正規ルート(Aルート・Bルート)の大学部分と同等の科目を履修したと見なされた人たちが対象になります。

大学+養成大学院ルート(Eルート)と違うのは、大学院には行かずに実務経験を積むところです。

この実務経験は、養成大学+実務経験を積むルート(Bルート)と同じで、認定された機関での実務経験となります。

そして、実務経験を積むことで受験資格を得られます。

現任者ルート(Gルート)

現任者ルート、いわゆるGルートは、今まで解説してきた経過措置のルートでは受験資格が得ることができない心理職として働いている人たちのためのルートです。

週1日以上、5年以上の実務経験が必要です。

このルートは、大学や大学院で心理学の単位を修めていても単位の読み替えができなかった心理職として働いている人や、大学や大学院で心理学を修めていなくて心理職として働いている人が対象です。

前者の場合は、大学・大学院がどこまで遡って単位の読み替えをするかにかかっているため、心理学の博士号を持っている人でも、現任者ルート(Gルート)になることがあります。

また、心理学の修士号以上を持っていても、単位が足りなかった現任者もこのルートになります。

現任者ルート(Gルート)では、実務経験があるだけでは受験資格が得られません。現任者講習会という講習を受講することが条件となっています。

さらに、この経過措置は5年以内と決められています。

現任者講習会自体は実務経験とは関係なく受講できるので、受講証明書と実務経験証明書を提出して受験資格の有無が判定されることになります。第1回公認心理師国家試験で混乱が起こったところです。

実務経験は何年も前のものは認められません。どのような場合に認められるかは、厚生労働省が公開している「公認心理師カリキュラム等検討会報告書」に書かれています。

少しわかりにくいですが、施行日に業務を行っていた場合、合計5年以上の実務経験で受験資格が得られます。

施行日に業務を休止等していた場合は、施行日より5年以上前に休止等していたら受験資格は得られません。5年以内であれば、合計5年以上の実務経験で受験資格が得られます。

現任者ルート(Gルート)は5年以内に公認心理師国家試験に合格しないと、受験資格を失うことになります。つまり、第5回公認心理師国家試験がリミットになります。

そこで合格できなかったら、公認心理師資格を取得するためには正規ルートを選ぶしかありません。

受験資格を得られた後

ここまで解説してきたルートで受験資格を得られたら、あとは公認心理師国家試験を受験し、合格して、登録を受けることで公認心理師資格を取得することができます。

国家試験に合格するだけでは公認心理師にはなれません。必ず登録を受ける必要があります。

公認心理師の登録を受けることで、公認心理師と名乗ることができるようになります。それと同時に、公認心理師法の規定を守る必要も出てきます。

公認心理師が国民の信頼を得られるように、努力していくことが求められます。


公認心理師国家試験の試験対策