臨床心理士とは?

臨床心理士という資格が気になるけど、それがどういう資格なのか、必要なものなのかわからなかったりしませんか?

心理カウンセラーの資格がたくさんあって、どれがいいのか困ってしまうかもしれません。「臨床心理士はよく聞くけど、どうなんだろう?」と思っている人も多いと思います。

この記事を読めば、臨床心理士とは何かがわかります。

心理カウンセラーになりたいと思っている人、心理職として働きたいと思っている人向けの情報です。

臨床心理士とは?

臨床心理士は、心理カウンセラー・心理職の資格として最も有名なものの1つだと思います。カウンセラーに興味がある人の多くが、名前くらいは知っている資格ですね。

よく勘違いされるのですが、臨床心理士は国家資格ではありません。

臨床心理士は日本臨床心理士資格認定協会が認定している民間資格です。

日本臨床心理士資格認定協会によると、2018年4月1日時点で34,504名の臨床心理士が認定されているそうです。

臨床心理士の専門業務

臨床心理士に求められている専門業務は4つあります。

  1. 臨床心理査定
  2. 臨床心理面接
  3. 臨床心理的地域援助
  4. 上記1~3に関する調査・研究

公認心理師の業務と一番大きく違うところは4番目の「調査・研究」です。ここが臨床心理士の特色と言えます。

臨床心理査定

臨床心理査定は「アセスメント」とも呼ばれるものです。クライエントがどのような状態なのかを調べるということです。

これについて、日本臨床心理士資格認定協会は次のように説明しています。

臨床心理査定とは、種々の心理テストや観察面接を通じて、個々人の独自性、個別性の固有な特徴や問題点の所在を明らかにすることを意味します。また同時に、心の問題で悩む人々をどのような方法で援助するのが望ましいかを明らかにしようとします。加えて、他の専門家とも検討を行う専門行為といえます。

日本臨床心理士資格認定協会:臨床心理士の専門業務

心理学的な支援を行うには、アセスメントが欠かせません。これは医学的な治療を行うときに診断が必要なのと同じです。

そのアセスメントのことを臨床心理査定と呼んでいます。

臨床心理査定は心理テストや観察面接を通じて行います。ここで言う心理テストは、一般的な「何番を選んだ人はこんな人!」のようなものではありません。

臨床心理査定で使用される心理テストは、研究によって測定したいものが測定できると明らかにされているものを指します。

さまざまな方法を使って臨床心理査定を行い、クライエントをどのように支援するのがいいのかを明らかにしていきます。そのため、臨床心理査定は臨床心理士にとって重要な専門業務と言えます。

臨床心理面接

臨床心理面接はカウンセリングを想像してもらえるとわかりやすいと思います。

日本臨床心理士資格認定協会は臨床心理面接を次のように説明しています。

来談する人の特徴に応じて、さまざまな臨床心理学的技法(精神分析、夢分析、遊戯療法、クライエント中心療法、集団心理療法、行動療法、箱庭療法、臨床動作法、家族療法、芸術療法、認知療法、ゲシュタルト療法、イメージ療法など)を用いて、クライエントの心の支援に資する臨床心理士のもっとも中心的な専門行為です。

日本臨床心理士資格認定協会:臨床心理士の専門業務

臨床心理士が行っている臨床心理面接は、ただ話を聞くといったものではなく、専門的な行為です。

きちんと臨床心理面接を行えるように、臨床心理士の養成課程ではトレーニングが実施されているということになります。

臨床心理面接で使われる臨床心理学的技法がいくつも書かれていますが、臨床心理士によって専門としているものが異なっています。

臨床心理士になろうと思っていて、特定の臨床心理学的技法に興味がある場合は、それを専門としている先生がいる大学院を選ぶことをオススメします。

臨床心理的地域援助

臨床心理的地域援助はイメージしにくいものかもしれません。

まず、日本臨床心理士資格認定協会による臨床心理的地域援助の説明を見てみましょう。

専門的に特定の個人を対象とするだけでなく、地域住民や学校、職場に所属する人々(コミュニティ)の心の健康や地域住民の被害の支援活動を行うことも臨床心理士の専門性を活かした重要な専門行為です。(中略)一般的な生活環境の健全な発展のために、心理的情報を提供したり提言する活動も”地域援助”の業務に含まれます。

日本臨床心理士資格認定協会:臨床心理士の専門業務

心理カウンセラーが行うことは一般的に個人を対象にしたものというイメージがあるかもしれません。

臨床心理士は個人を対象にした支援だけでなく、コミュニティを対象にした支援を行うこともその専門業務になっています。

情報提供や提言も臨床心理的地域援助に含まれるものです。

調査・研究

心理学的な支援を行うだけでなく、調査や研究を行うことも臨床心理士の重要な専門業務とされています。

臨床心理士は臨床心理学を基盤として専門的な支援をしています。そのため、臨床心理学の発展や支援方法をより良いものにしていく調査・研究が重要なものとなります。

臨床心理士の職域

臨床心理士はさまざまな分野で活躍しています。それは臨床心理士資格が「汎用資格」として作られていることも関係しています。

どこかの分野に特化した資格ではないため、複数の分野で活躍している臨床心理士もいます。

日本臨床心理士資格認定協会がサイトで説明している分野は5つあります。

  • 教育分野
  • 医療・保健分野
  • 福祉分野
  • 司法・矯正分野
  • 労働・産業分野

これは公認心理師の主要5分野と同じものです。

教育分野の臨床心理士

教育分野の臨床心理士として最も知られているのがスクールカウンセラーだと思います。

文部科学省が出している「スクールカウンセラー等活用事業実施要領」の「スクールカウンセラーの選考」には臨床心理士が入っています。

他にも教育センターや教育相談機関で臨床心理士が活躍しています。

医療・保健分野の臨床心理士

医療・保健分野の臨床心理士は、精神科や心療内科、発達障害を専門としている医療機関などの心理士として活躍しています。

また乳幼児の健康診査や発達相談に関わることもあります。

福祉分野の臨床心理士

福祉分野の臨床心理士は、障害者福祉施設や児童福祉施設などで活躍しています。

児童相談所などでは、臨床心理士が心理職として働いています。

福祉分野の心理職の雇用はこれからというところですが、重要な分野の1つと言えます。

司法・矯正分野の臨床心理士

司法・矯正分野の臨床心理士は、家庭裁判所や少年鑑別所、刑務所などで活躍しています。

最近では刑務所の更生プログラムとして認知行動療法(CBT)が使われ始めるなど、心理職の活躍が期待される分野です。

労働・産業分野の臨床心理士

労働・産業分野の臨床心理士は、職場のメンタルヘルスに関する支援を行っています。

労働者のメンタルヘルスのために、労働者に対して支援を行ったり、職場環境を改善するためのアドバイスを行ったりしています。

臨床心理士になるには

臨床心理士になるには、臨床心理士の養成課程を持つ大学院(指定大学院)または専門職大学院を修了して、資格試験に合格する必要があります。

※医師であれば、免許取得後2年以上の心理臨床経験を有していれば受験資格が得られます。

大学で心理学を専攻していなくても指定大学院に入学することはできますが、心理学の知識は必須なのでしっかりと勉強することが必要です。

指定大学院には1種と2種があります。

1種指定大学院は、大学院修了後の最初の試験を受験することができます。

2種指定大学院は、大学院修了後、1年以上の実務経験で受験資格を得られます。

臨床心理士資格審査

臨床心理士資格審査には一次試験と二次試験があります。

一次試験は筆記試験で、マークシート方式の多肢選択方式試験(100問、2時間30分)と、論文記述試験(1時間30分)を1日で実施します。

多肢選択方式試験の成績で二次試験が受けられるかが決まります。

二次試験は2名の面接委員による口述面接試験です。

一次試験と二次試験の成績を合わせて合否が決まります。

最後に

2019年現在、臨床心理士はさまざまな分野で活躍しています。

国家資格である公認心理師が誕生し、臨床心理士がどうなっていくかはわかりませんが、現時点で心理カウンセラーなどの心理職になりたいのであれば、臨床心理士資格を持っていることは有利になります。

中学生・高校生であれば、公認心理師を取ることを目指して、公認心理師対応カリキュラムのある大学に入ることをオススメします。

大学院によっては公認心理師と臨床心理士の両方の受験資格が得られるカリキュラムがあるので、両方の資格が欲しい場合にはそのような大学院に進学しましょう。

すでに他の仕事をしている人は、年齢などによって判断が変わってくると思います。

心理職として長く働きたいと思っているなら、公認心理師と臨床心理士の両方を目指すために、公認心理師対応カリキュラムのある大学への入学をオススメします。

放送大学などの通信制の大学でも、公認心理師対応カリキュラムがあるので、仕事をしながら学部段階を終えることができるかもしれません。