【ヘルピングスキル】開かれた質問と探りとは何か?どう使うのか?

開かれた質問は閉じられた質問とともに、臨床心理の世界では誰もが知っているものです。開かれた質問が大事だとわかっていても、うまくいかないことはありませんか?

ヘルピングスキルでは、開かれた質問と探りが探求段階のスキルとして取り上げられています。ヘルピングスキルを知ることで、どのように開かれた質問をすれば効果的なのかがわかります。

それと同時に、開かれた質問を行うときに、ヘルパー(カウンセラーやセラピストを含む)が経験する問題も知ることができます。

最も重要なことは、開かれた質問をスキルとして練習することで、クライエントにより効果的な関わりができるようになることです。

それでは、ヘルピングスキルにおける開かれた質問と探りを見ていきましょう。

開かれた質問と探りの概要

ヘルピングスキルにおける開かれた質問と探りを身につける前に、開かれた質問と探りがどのようなものか知る必要があります。

スキルがどのようなものかを知ることで、スキルがうまく使えているかをチェックすることや、練習することが可能になります。

ヘルピングについては、「ヘルピングスキルにおける「ヘルピング」とは何か?」をご覧ください。

開かれた質問と探りとはどのようなものか?

開かれた質問と探りスキルは、ヘルピングスキルの探索段階において重要な役割を果たします。

『ヘルピング・スキル第2版-探求・洞察・行動のためのこころの援助法』には、開かれた質問と探りについて次のように書かれています。

開かれた質問と探り(open questions and probes)は、クライエントが自分の思考と感情(フィーリング)を明確化し探求することを促す。この方法を使うときは、ヘルパーはクライエントから具体的な答えを求めたいわけではなく、かわりにクライエントに心に浮かんでくることのすべてを探求させたいのである。(p.105)

『ヘルピング・スキル第2版-探求・洞察・行動のためのこころの援助法』

クライエントが話していることについて具体的な答えが欲しくなる時があると思います。開かれた質問と探りはそのために用いるスキルではないということです。

開かれた質問と探りスキルには、思考と感情を明確化して探求することを促す目的があります。このスキルが探求段階に位置づけられている理由はここにあるのでしょう。

『ヘルピング・スキル第2版』によると、開かれた質問と探りには4種類あります。

この章において中心となるのは、4種類の異なった開かれた質問と探りについてである。明確化や焦点づけを求めるもの、思考の探求を促すもの、感情(フィーリング)の探求を促すもの、および例示を要請するものである。(p.105)

『ヘルピング・スキル第2版-探求・洞察・行動のためのこころの援助法』

開かれた質問と探りはクライエントが思考と感情を探求するために、4種類が使い分けられます。

  • 明確化・焦点づけを求めるもの
  • 思考の探求を促すもの
  • 感情の探求を促すもの
  • 例示を要請するもの

開かれた質問を意識的に使用することはあっても、このように細分化した目的意識をもって使用することがなかったり、少なかったりする人もいるでしょう。

ヘルピングスキルではこれらをスキルとして身につけることができます。

開かれた質問と探りの使い方

開かれた質問は閉じられた質問と対比されることもあるもので、「Yes-No」では答えられず、クライエントに話すことを求めるものでもあります。

クライエントは質問されたことについて考え、話します。探求段階で重要なスキルとなっているのがわかると思います。

あくまで目的は探求なので、クライエントの考えが正しいかどうかは関係ありません。自由に探求できるように、クライエントが自由に語れる環境を提供することがヘルパーの役割になります。

開かれた質問のポイント

開かれた質問のポイントは、短く簡潔であること、クライエントに焦点を当て続けることです。

短く簡潔であること

誰でも経験があると思いますが、長々と話された後の質問というのは、何を答えればいいかわからなくなることがあります。質問者が話題にしたどれに反応すればいいか困ってしまうからです。

それを避けるためにも、クライエントが探求しやすくなるためにも、開かれた質問は短く簡潔である必要があります。

『ヘルピング・スキル第2版』では、次のように表現されています。

開かれた質問は短く簡潔であるべきである。クライエントは長々しい質問に答えるのは困難を感じるだろう。ヘルパーは、一度にいくつもの質問をするのも避けるべきである。これは、クライエントを混乱させかねないからである。(p.108)

『ヘルピング・スキル第2版-探求・洞察・行動のためのこころの援助法』

クライエントの話を聞いているとき、いくつかのことを聞きたくなることがあるかもしれません。そのようなとき、「それでどうなりました? あなたはどう思いました?」のように質問を複数続けることは避ける必要があります。

もし両方の質問をしたいのであれば、どちらかを先に質問し、その答えを聞いてから、次の質問に移ることが必要でしょう。

クライエントに焦点を当て続けること

クライエントが他者との関係について話していると、そこに登場する他者に関心をもつことがあります。そういうときでも、クライエントに焦点を当て続けることが、開かれた質問のポイントです。

探求段階では、クライエントが他者について探求するのではなく、自分自身について探求することが目的です。このことが重要なポイントになります。

ヘルパーが自分の好奇心を満足させるために開かれた質問を使ってしまうことについて、『ヘルピング・スキル第2版』に面白い例が載っています。

マーサがセッションにやってきて、彼女の姉が「人気のある」映画スターとデートしたことを告げる。ヘルパーはびっくりして「へー、どうやって彼と会えたの?」とか「それはいったい誰なの?」声をあげるかもしれない。(p.111-112)

『ヘルピング・スキル第2版-探求・洞察・行動のためのこころの援助法』

ヘルパー自身も人間であるため、自分が興味を持つような話題が話されたとき、そのことについて詳しく知りたくなってしまうものです。それ自体は仕方ないことですが、好奇心を満足させたくなっている自分に気づくことが重要です。

自分の好奇心を満足させるために開かれた質問を使ってしまったことに気づいたら、すぐに軌道修正するようにしましょう。

開かれた質問と探りを行うときの注意点

開かれた質問と探りスキルを使うときに注意することは、どのようなことでしょうか?

「なぜ」の使用

『ヘルピング・スキル第2版』には、次のように書かれています。

ヘルパーは、特に探求段階では、「なぜ」という質問(例:「この前の夜、ボーイフレンドに怒っていたのはなぜですか」「なぜ勉強することができないのでしょうか」)も避けるべきである(「なぜ」という質問は、洞察段階で適切に使われるぶんには有益となりうることに注意)。(p.109)

『ヘルピング・スキル第2版-探求・洞察・行動のためのこころの援助法』

「なぜ」を使いたくなってしまうことは誰にでもあると思います。しかし、ヘルピング・プロセスの探求段階では注意が必要です。

また、ヘルピング全体を通して「なぜ」が問題なのではなく、探求段階で問題となりやすいということです。引用したところにも書かれているように、洞察段階で適切に使えば有益になりうるものです。

同じ種類の開かれた質問

「開かれた質問」というのは、いろいろな形があります。それを使い分けることが重要なのですが、開かれた質問を練習しようとすると、ぎこちなくなってしまうことがあると思います。

意識しすぎて同じような質問ばかりしてしまうというのが典型例だと思います。これについて『ヘルピング・スキル第2版』には、次のように書かれています。

よくある問題は、ヘルパーが繰り返し同じ種類の開かれた質問をしがちなことである。最も多いのは「そのことについてどのように感じました」である。多くのクライエントは、同じ種類の質問を立て続けに聞くと、イライラしはじめ、応答するのが難しくなる。(p.111)

『ヘルピング・スキル第2版-探求・洞察・行動のためのこころの援助法』

開かれた質問のレパートリーが少ない段階では、同じ種類の質問を繰り返してしまうことはよくあることだと思います。どう反応すればいいか困ったときにもこのようなことは起きがちです。

質問する側のヘルパーは必死にクライエントの役に立とうとしていたとしても、クライエントがイライラしてしまうこともあります。

自分がどのような開かれた質問をしているかをモニターしながら、ヘルピング・プロセスを勧めていく必要があります。

まとめ

ヘルピングスキルの開かれた質問と探りは、ヘルピングスキルでなくても重要なものです。新しいものではなく、ずっと言われ続けてきたものでもあります。

開かれた質問と探りには4種類あります。

種類
  • 明確化・焦点づけを求めるもの
  • 思考の探求を促すもの
  • 感情の探求を促すもの
  • 例示を要請するもの

開かれた質問と探りを使用するときのポイントは次の通りです。

ポイント
  • 短く簡潔であること
  • クライエントに焦点を当て続けること

開かれた質問と探りの使用には、次のことを注意しましょう。

注意点
  • なぜ」の使用を控える
  • 同じ種類の開かれた質問をしないようにする

『ヘルピング・スキル第2版』には、開かれた質問の例や、有益なヒントも書かれています。

実践練習とグループ実習もあるので、仲間を集めて練習することも可能です。トレーニングだけでなく、スキルの確認に使うこともできます。

ヘルピング・スキル第2版-探求・洞察・行動のためのこころの援助法