公認心理師の多職種連携

公認心理師は他職種との連携を重視した資格になっています。チーム医療やチーム学校のように、多職種連携が行われている中に公認心理師が入っていることがその理由と考えられます。

相談室にこもってクライエントにだけ向き合いたいのであれば、公認心理師資格を取らない方がいいかもしれません。

今回は多職種連携について、チーム医療とチーム学校を例に挙げながら説明していきます。

多職種連携とは?

多職種連携とはどういうものなのでしょうか?

公認心理師の活躍が期待される主要5分野(保健・医療、教育、福祉、司法・犯罪、産業・労働)では、心理職以外の職種の人たちと協力する必要があります。

保健・医療分野であれば医師や看護師などと一緒に公認心理師が治療・支援にあたることになります。

公認心理師が単独で治療・支援を行うわけではなく、さまざまな職種の人たちと協力することになります。

教育分野であれば教育職(教師)を中心として、公認心理師が心理学的な視点から支援に加わることになります。

保健・医療分野ではチーム医療、教育分野ではチーム学校として、多職種連携の仕組みが存在していて、その中に公認心理師がいるという構造になっています。

『公認心理師必携テキスト』には次のように書かれています。

近年、保健医療、福祉、介護、教育との連携(多職種連携や地域連携)、家族との連携が、非常に重要になってきている。(p.53)

『公認心理師必携テキスト』

他職種との連携については公認心理師法第42条で、公認心理師の義務として規定されています。

公認心理師の法的義務と罰則・行政処分

公認心理師が単独でクライエントの支援をすることがないわけではありませんが、多くの場合、多職種と協働的に支援を行っていくことになります。

そのために必要なことが多職種連携です。

チーム医療

保健・医療分野での多職種連携は、チーム医療と呼ばれています。

チーム医療とは、2010年(平成22年)3月19日に出された厚生労働省の「チーム医療の推進について(チーム医療の推進に関する検討会報告書)(PDFファイル)」によると、次のように定義されています。

チーム医療とは、「医療に従事する多種多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供すること」と一般的に理解されている。

チーム医療の推進について(チームの推進に関する検討会報告書)

この定義のポイントは5点です。

  1. 医療に従事する多種多様な医療スタッフ
  2. 高い専門性が前提
  3. 目的と情報を共有
  4. 業務分担と連携・補完
  5. 患者の状況に的確に対応した医療の提供

心理職は臨床心理技術者として保健・医療分野で活動してきましたが、これからは国家資格の公認心理師に置き換わっていくと考えられます。

そのとき、チーム医療の一員として医療の向上に寄与できるだけの高い専門性と多職種連携が重要になります。

厚生労働省の「チーム医療の推進について」で挙げられている医療チームの具体例は次の通りです。

  • 栄養サポートチーム
  • 感染制御チーム
  • 緩和ケアチーム
  • 口腔ケアチーム
  • 呼吸サポートチーム
  • 摂食嚥下チーム
  • 褥瘡対策チーム
  • 周産期管理チーム

チーム医療の推進について(チームの推進に関する検討会報告書)

チーム学校(チームとしての学校)

教育分野でもチームとしての働きが求められます。それは「チームとしての学校」と呼ばれ、一般的には「チーム学校」という言われています。

2015年(平成27年)11月の中央教育審議会の「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」という答申にチーム学校について書かれています。

その中の「「チームとしての学校」の在り方」には、次のように書かれています。

「チームとしての学校」像
校長のリーダーシップの下、カリキュラム、日々の教育活動、学校の資源が一体的にマネジメントされ、教職員や学校内の多様な人材が、それぞれの専門性を生かして能力を発揮し、子供たちに必要な資質・能力を確実に身に付けさせることができる学校

チームとしての学校の在り方

教育分野での多職種連携としてチーム学校を挙げていますが、基本的には学校をチームという枠組みで捉え直し、それぞれの専門性を発揮して教育に当たるというイメージと言えます。

学校内の心理職であるスクールカウンセラーについては、「「チームとしての学校」を実現していくための具体的な改善方策」に書かれています。

スクールカウンセラーは、心理の専門家として児童生徒へのカウンセリング困難・ストレスへの対処方法に資する教育プログラムの実施を行うとともに、児童生徒への対応について教職員、保護者への専門的な助言や援助、教育のカウンセリング能力等の向上を図る研修を行っている専門職である。

「チームとしての学校」を実現していくための具体的な改善方策

「児童生徒へのカウンセリング困難・ストレスへの対処方法」となっているのは原文のままで、おそらく本来は「児童生徒へのカウンセリング、困難・ストレスへの対処方法」だと思われます。

スクールカウンセラーの資格として公認心理師が入り、学校教育法施行規則にもスクールカウンセラーが位置づけられています。

学校で働く公認心理師は、必然的にチーム学校の一員として活動することになります。

スクールカウンセラーの位置づけと学校教育法施行規則

まとめ

公認心理師法第42条に連携等が書かれているように、公認心理師には多職種連携が求められています。

ここではチーム医療とチーム学校を挙げましたが、他の分野においても連携は重要なものとなっています。

公認心理師が単独で支援をする状況というのはあまり多くはないと考えられ、他職種と連携しながら支援を行っていくことになります。

そのため、公認心理師としての高い専門性、他職種の専門性の尊重、チームとして活動するためのコミュニケーション等が重要になります。