ヘルピングスキルにおける「ヘルピング」とは何か?

心理職を含む対人援助職にとって、援助に必要なスキルというのはとても重要なものです。その1つとしてヘルピングスキルと呼ばれるものがあります。

「ヘルピングスキル」という名前からいろいろと想像できますが、ヘルピングスキルのおける「ヘルピング」とはどういうものなのでしょうか?

心理療法の話題になると、それぞれの療法の技法や理論、エビデンスなどが取り上げられることが多いと思います。ワークショップなどの研修でも、そういうものを扱ったものが多くあります。

一方で、基礎的なスキルということに関するトレーニングはあまりないような気がしています。臨床心理士などの有資格者を対象として考えるのであれば、その養成課程で十分なトレーニングを受けてきているということなのかもしれません。

ただ、臨床心理士は今でこそ指定大学院を修了することが必須になっていますが、実務経験で受験資格を得られた時代がありました。2018年に第1回の試験が行われた国家資格である公認心理師も、現任者ルートとして、トレーニングの有無を問わない受験資格が5年間限定で認められています。

さらに、大学院等でトレーニングを受けてきても、十分ではないと感じている人もいるでしょう。

そういう人たちのために、ヘルピングスキルがとても役に立つ可能性があります。

心理職の基礎スキルとして役に立つ可能性があるヘルピングスキルですが、そのヘルピングスキルにおける「ヘルピング」はどういうものなのでしょうか?

ヘルピングとは何か?

ヘルピングスキルに関しては、『ヘルピング・スキル第2版-探求・洞察・行動のためのこころの援助法』というテキストが出版されています。

『ヘルピング・スキル第2版』では、「ヘルピング」を次のように定義しています。

「ヘルピング」は、ある人物が別の人物を援助して、感情(フィーリング)を探求し、洞察を得て、生活に変化を起こせるようにすることとして定義される。(p.4)

『ヘルピング・スキル第2版』

ヘルピングの基本となるのが、人が人を援助するということです。そして、「感情(フィーリング)を探求し、洞察を得て、生活に変化を起こせるようにすること」がその定義に含まれています。

感情を探求するだけでもなく、洞察を得るだけでもなく、それらと合わせて生活に変化を起こせるようにすることが「ヘルピング」です。

ただ生活に変化を起こせるようにすることだけでもないというところも、ヘルピングの重要なポイントになります。

ヘルピングスキルとコミュニケーション、介入

ヘルピングは、人が人を援助するというものなので、当然のようにコミュニケーションの中で行われることになります。

ヘルピング・スキルは、コミュニケーションの言語的な形態と非言語的な形態の両方を含んでいる。(p.4)

『ヘルピング・スキル第2版』

コミュニケーションには、言語的(バーバル)なものと、非言語的(ノンバーバル)なものに分けられます。ヘルピングは、その両方の形態を含んでいるということです。

そのようなコミュニケーションが含まれるヘルピングスキルの介入については、次のように書かれています。

これらの介入には、かかわりと傾聴行動、閉じられた質問と開かれた質問、言い換え、感情(フィーリング)の反映、是認-保証、沈黙、挑戦、解釈、自己開示、即時性、情報、および直接ガイダンスが含まれている。(p.4)

『ヘルピング・スキル第2版』

ヘルピングスキルにおける介入には、様々なものがあることがわかります。これらは、ヘルピングスキルに限らず、多少の違いはあるにしても重要とされているものが多いことがわかります。

このような介入(コミュニケーション)を行いながら、「感情(フィーリング)を探求し、洞察を得て、生活に変化を起こせるようにすること」を目指すのがヘルピングということです。

ヘルピングとカウンセリングや心理療法はどう違うのか?

心理職として気になるところは、ヘルピングとカウンセリングや心理療法はどう違うのかというところだと思います。

ヘルピングがカウンセリングや心理療法を代替するものなのか、そうではないのか、というところです。

カウンセリングや心理療法がどう定義されるかということについては割愛するとして、それらはヘルピングとどういう関係になるものなのでしょうか?

これについては、『ヘルピング・スキル第2版』に次のように書かれています。

自分をカウンセラーはセラピストだと思えるまでには、このヘルピング・スキルの講義で受ける以上の多くの訓練、実践、およびスーパービジョンが必要とされる。(p.4)

『ヘルピング・スキル第2版』

ヘルピングスキルだけでは、自分をカウンセラーやセラピストだと思えるようにはならず、より多くのトレーニングなどが必要ということです。

つまり、ヘルピングはカウンセリングや心理療法を代替するものではないと言えます。

さらに、『ヘルピング・スキル第2版』には、次のようにも書かれています。

この本は、カウンセリングとサイコセラピーはとても類似しており、ヘルピング・スキルはカウンセリングとセラピー双方の基盤を形成し、そして、ほとんどの人にとって基礎的なヘルピング・スキルを学習することは有益であるという観点から書かれている。(p.5)

『ヘルピング・スキル第2版』

ヘルピングスキルは、カウンセリングと心理療法の基盤、基礎的なスキルとして位置づけられています。ヘルピングスキルが基礎にあり、その上に心理療法・カウンセリングのスキルがあるイメージです。

心理職の養成課程を出た後にトレーニングを受けようとしたとき、各療法のトレーニングという形はたくさんあります。しかし、基礎的なスキルのトレーニングはあまりありません。

基礎は養成課程でトレーニングされているという前提に立っているのかもしれませんが、そこが十分ではなかったと感じている人もいると思います。

それと同時に、養成課程を出ていない心理職もいて、そういう人たちも臨床心理士などの有資格者として活躍しています。さらに、公認心理師も5年間に限り、現任者ルートとして実務経験だけで受験資格を得ることができます。

カウンセリングや心理療法のスキルを十分に使いこなし、クライエントに役に立つようになるためには、基礎的なスキルが重要です。そういう意味で、ヘルピングスキルが役に立つと思われます。

まとめ

  • 「ヘルピング」は、感情を探求し、洞察を得て、生活に変化を起こせるする援助である
  • ヘルピングスキルは複数のスキルで構成されている
  • ヘルピングスキルは、心理療法・カウンセリングの基礎・基盤となるスキルである

ヘルピング・スキル第2版-探求・洞察・行動のためのこころの援助法

コメント