薬物療法の有害事象と副作用-錐体外路症状、抗コリン作用、賦活症候群

精神疾患には薬物療法が使われます。薬物療法には有害事象と副作用があり、公認心理師としても理解しておく必要があります。

今回取り上げるのは次の3つです。

  • 錐体外路症状
  • 抗コリン作用
  • 賦活症候群

それぞれについて見ていきましょう。

錐体外路症状

『研修医・コメディカルのための精神疾患の薬物療法講義』(p.25)には、錐体外路症状(EPS)について受容体との関係で説明されています。

D2受容体を遮断しすぎるとEPSが出現し、ヒスタミンH1受容体やアドレナリンα1受容体の遮断が強すぎると、鎮静作用が目立ちます。(p.25)

『研修医・コメディカルのための精神疾患の薬物療法講義』

このような機序で生じる錐体外路症状とはどのようなものなのでしょうか?

『研修医・コメディカルのための精神疾患の薬物療法講義』(p.25)の表によると、錐体外路症状は急性と慢性に分かれています。それぞれは次のような症状となっています。

  • 急性:振戦、歩行障害、動作緩慢、流涎、筋強剛、アカシジア、ジストニア
  • 慢性:遅発性ジスキネジア

『研修医・コメディカルのための精神疾患の薬物療法講義』

『研修医・コメディカルのための精神疾患の薬物療法講義』に書かれている錐体外路症状は、『公認心理師必携テキスト』のと全く同じではありません。

公認心理師必携テキスト』(p.496-497)に出てくるのは次の4つです。

  • アカシジア(着座不能)
  • パーキンソン症状
  • 急性ジストニア
  • 遅発性ジスキネジア

『公認心理師必携テキスト』

アカシジア、(急性)ジストニア、遅発性ジスキネジアは同じですが、『公認心理師必携テキスト』にはパーキンソン症状があります。

一方、『研修医・コメディカルのための精神疾患の薬物療法講義』には、振戦、歩行障害、動作緩慢、流涎、筋強剛があります。 残念ながら、薬物療法講義にはそれぞれの細かい症状が載っていませんが、『公認心理師必携テキスト』を見ると謎を解明することができます。

その謎の解明も含めて、ここでは『公認心理師必携テキスト』に書かれている4つの症状を説明します。

アカシジア

アカシジアは着座不能のことで、『公認心理師必携テキスト』には次のように書かれています。

じっとしていられず、落ち着かなくなる。(p.496)

『公認心理師必携テキスト』

落ち着かなくなる症状がアカシジアです。

アカシジアはあの大御所の芸人さんと関連づければ覚えやすいかもしれないなと思っています。

パーキンソン症状

『公認心理師必携テキスト』には、パーキンソン症状について、次のように書かれています。

「動作が遅くなった」「声が小さくなった」「表情が少なくなった」「歩き方がふらふらする」「歩幅がせまくなった(小刻み歩行)」「一歩目が出ない」「手が震える(振戦)」「止まれず走り出すことがある」「手足が固い(筋強剛)」などの症状をいう。(p.496)

『公認心理師必携テキスト』

パーキンソン症状の説明に「振戦」と「筋強剛」が出てきています。

また、『公認心理師必携テキスト』の記述を見ると、「動作が遅くなった」とあるので、これは『研修医・コメディカルのための精神疾患の薬物療法講義』にある「動作緩慢」のことを指していると思われます。

さらに、「歩き方がふらふらする」「歩幅がせまくなった(小刻み歩行)」「一歩目が出ない」は、『研修医・コメディカルのための精神疾患の薬物療法講義』にある「歩行障害」のことと言えます。

上記のことから、研修医・コメディカルのための精神疾患の薬物療法講義』の「動作緩慢」、「歩行障害」、「振戦」、「筋強剛」は、『公認心理師必携テキスト』では「パーキンソン症状」にまとめられていることがわかります。

急性ジストニア

『公認心理師必携テキスト』では「急性ジストニア」、『研修医・コメディカルのための精神疾患の薬物療法講義』では「急性」の中の「ジストニア」なので、同じものを指していると思われます。そのため、同じものとして扱います。

急性ジストニアは、『公認心理師必携テキスト』で次のように説明されています。

顔や首が強くこわばる、首が反り返る、目が上を向いたまま正面を向かない(眼球上転)、舌が出たままになる、ろれつがまわらない、体が傾く、手足がつっぱるなどの症状をいう。(p.496-497)

『公認心理師必携テキスト』

急性ジストニアの症状は、錐体外路症状の機序を紐解けば関連性を見出せるかもしれませんが、そこまで勉強しないのであれば丸暗記をオススメします。

ただ、首から上の筋肉の動きに関する症状と、体幹・四肢の筋肉の動きに関する症状の2種類と覚えるといいかもしれません。

遅発性ジスキネジア

遅発性ジスキネジアは、『研修医・コメディカルのための精神疾患の薬物療法講義』によると慢性の症状とされています。「遅発性」とあるだけあって、すぐに出てくる症状ではないということなのでしょう。

遅発性ジスキネジアについて『公認心理師必携テキスト』でどのように書かれているかを見てみましょう。

抗精神病薬などを長期間使用していると出現する、自分では止められない、または止めてもすぐに出現する動き(繰り返し唇をすぼめる、舌を左右に動かす、口をもぐもぐさせる、口を突き出す、歯を食いしばる、目を閉じるとなかなか開かずしわを寄せている、勝手に手が動いてしまう)などの症状をいう。(p.497)

『公認心理師必携テキスト』

「抗精神病薬などを長期間使用していると」とあるので、すぐに出てくる症状ではないというのは正解のようです。

「抗精神病薬の服薬を始め、すぐに遅発性ジスキネジアの症状が出た」という問題があったら、×ということになります。

これを見ていて思ったのが、超能力の「テレキネシス」との関係です。「キネジア」と「キネシス」が似ているからです。

Wikipediaによると、テレキネシスは「テレ+キネーシス」で、英語に直訳すると「distant-movement」らしいです。

実際はどうかわかりませんが、勝手に「キネジア=キネシス」と思って、movementがコントロール不能状態になっているとこじつけてみようかと思います。コントロール不能だから、止められないし、止めてもすぐに出現する動きということです。

本当のところはどうなのかわかりませんが、ただ丸暗記するよりは覚えやすいと思います。

抗コリン作用

『公認心理師必携テキスト』の「向精神薬の一般名・主な商品名・副作用」(p.498~)という表では、抗コリン作用が三環系抗うつ薬と四環系抗うつ薬に書かれています。

四環系抗うつ薬については、「三環系抗うつ薬と同様の副作用があるが、抗コリン作用が比較的弱い」(p.499)とあるので、主に三環系抗うつ薬の副作用ということなのでしょう。

抗コリン作用がどのような副作用かというと、『研修医・コメディカルのための精神疾患の薬物療法講義』の「抗コリン性の副作用」に書かれています。

三環系抗うつ薬でよくみあれるのは、抗コリン性の副作用であり、消化器系が口から腸まで抑制されます。すなわち、唾液の分泌低下による口渇、胃部不快感や胸部不快感(胸のむかつき)、消化不良、便秘です。また、尿管や膀胱の収縮の抑制によって排尿困難や閉尿も生じます。(p.74)

『研修医・コメディカルのための精神疾患の薬物療法講義』

抗コリン作用は基本的に消化器系の副作用と言えます。それに加えて、泌尿器系の副作用もあり、排尿困難や閉尿という症状もあります。

『公認心理師必携テキスト』(p.499)には、羞明と眼内圧亢進というのも書かれています。羞明(しゅうめい)はまぶしく見えることらしいので、目に関する症状も出るようです。

賦活症候群

賦活症候群は、『公認心理師必携テキスト』の「向精神薬の一般名・主な商品名・副作用」(p.498~)という表では、SSRIとSNRIの副作用のところに書かれています。

『研修医・コメディカルのための精神疾患の薬物療法講義』では、次のように書かれています。

SSRIなどの新しい抗うつ薬の副作用として見逃されやすく注意しなければならないのが、賦活症候群、離脱症候群、セロトニン症候群という3つの症候群です。(p.74)

『研修医・コメディカルのための精神疾患の薬物療法講義』

SSRIなどの新しい抗うつ薬には賦活症候群、離脱症候群、セロトニン症候群という3つの副作用があり、見逃されやすく注意が必要です。

賦活症候群については、『研修医・コメディカルのための精神疾患の薬物療法講義』に詳しく説明されています。薬物療法講義には、賦活症候群を直訳すると活性化症候群になると書かれていて、その後に賦活症候群の症状が書かれています。

この場合に抗うつ薬が活性化させるのは、イライラ、不安、焦燥、パニック発作、攻撃性、衝動性、不眠、アカシジア(静座不能)、躁ないし軽躁です。最悪の場合、自殺念慮を引き起こします。特に、25歳未満の若年者では、SSRIなどの抗うつ薬はプラセボと比較して自殺念慮の副作用を有意に多く生じさせるというデータがあり、若年者に対して抗うつ薬を投与する場合は慎重でなければなりません。(p.75)

『研修医・コメディカルのための精神疾患の薬物療法講義』

若年者の自殺念慮については一時期話題になったので覚えている人も多いと思います。その若年者が25歳未満ということを覚えておきましょう。

賦活症候群は全般的に落ち着かなくなるようなイメージかなと思いました。すべての症状を覚えてもいいと思いますが、全体的なイメージとして覚えておくという方法もあります。

まとめ

錐体外路症状

  • アカシジア(着座不能):ジッとしていられない、落ち着かなくなる
  • パーキンソン症状:動作緩慢、声が小さくなる、表情が少なくなる、歩行障害、振戦、筋強剛
  • 急性ジストニア:顔や首がこわばる、首が反り返る。眼球上転、舌が出たままになる、ろれつが回らない、体が傾く、手足が突っ張る
  • 遅発性ジスキネジア:繰り返し唇をすぼめる、舌を左右に動かす、口をもぐもぐさせる、口を突き出す、歯を食いしばる、目を閉じると開けられない、勝手に手が動く(自分では止められない、止めてもすぐに出現)

抗コリン作用

  • 消化器系が口から腸まで抑制:口渇、胃部・胸部不快感、消化不良、便秘
  • 泌尿器系症状:排尿困難、閉尿

賦活症候群

  • SSRI、SNRIの副作用
  • 活性化されるもの:イライラ、不安、焦燥、パニック発作、攻撃性、衝動性、不眠、アカシジア、躁、軽躁
  • 自殺遠慮を引き起こす
  • 25歳未満の場合、自殺念慮の副作用を有意に多く生じさせる

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